夜中の徘徊はどうする?認知症の家族ができる安全対策と相談先

夜中の徘徊はどうする?認知症の家族ができる安全対策と相談先

夜中に認知症の家族が徘徊する姿を見ると、「どう対処すればいいのか…」と途方に暮れ、「何か解決策はないのだろうか?」と悩む方がほとんどでしょう。

突然いなくなる不安

転倒や事故に遭わないかという心配

夜も目を離せず、慢性的な睡眠不足

このような悩みを抱える家族は、少なくありません。徘徊を無理に止めようとしても本人には理由があるため、強く制止すると余計に不安を増幅させてしまい悪循環がうまれます。

本記事では、認知症の家族ができる徘徊の対応方法、原因、予防方法や万が一行方不明になったときの初動対応まで、実践的な知識をまとめました。対策を知って準備しておけば、徘徊のリスクを減らせる可能性を高められます。

大切な家族の安全を守りながら、介護者も安心して休める生活を取り戻しましょう!

目次

夜中の徘徊を見つけたときの4つの対応法

深夜に認知症の家族が徘徊している場面に遭遇したら、まず落ち着いて対応することが求められます。

無理に止めようとしたり、強い口調で叱ったりすると、かえって混乱を招き、症状を悪化させてしまうことも。大切なのは、本人の気持ちを受け止めながら、安全に対処する姿勢です。

令和2年の警察庁の調査によると、行方不明者の中で原因を疾病関係とする23,592人のうち、17,565人が認知症またはその疑いによるものでした。

突然の徘徊に慌てず、本人の尊厳を守りながら対応する方法を知っておくことが重要です。

否定せずに本人の話を聞く

徘徊している姿を見かけたときに否定的な言葉は避け、穏やかに尋ねてみてください。

良い声掛けの例避けたい声掛けの例
どこにいくの?
何か探してるの?
どうしたの?
何か気になることがあったかな?
なぜ起きているの!?
すぐに部屋に戻って!
勝手に出ないで!
どこ行くの!ダメでしょ!

認知症の方は記憶障害や見当識障害があっても、羞恥心やプライドは残っているため、頭ごなしに否定されると、不安や混乱がさらに強まるのです。

本人の世界観を否定せず、まずは話を聞く姿勢を示すことが大切です。たとえ内容が現実とかけ離れていても、「そうですか」と一旦受け止めます。

認知症の方にとって、徘徊には必ず理由があります。「会社に行かなければ」「子どもを迎えに行く」といった発言があれば、現役時代の記憶がよみがえっているのかもしれません。

一緒に歩いて安心させる

無理に止めず、数分間一緒に歩いてあげるのも効果的な対応です。付き添いながら歩くことで、本人は「見守られている」という安心感を得られるでしょう。

歩くという行為自体が、本人の気持ちを満足させる場合もあります。危険がない範囲で見守りながら付き添うと、自然と落ち着いてくる方もいるのです。

ただし最優先は安全確保。階段や段差、玄関など危険な場所に近づかないよう、適度な距離を保ちながら見守ってください。

転倒のリスクがある場合は、脱げにくく歩きやすい靴を履いてもらうとよいでしょう。

トイレや水分補給の必要がないか確認する

トイレの場所がわからない…

喉が渇いたけど、水を飲む場所がわからない

徘徊の背景には、上記のような生理的不快感が隠れていることもあるので、「お手洗いに行きませんか?」「お水を飲みませんか?」と具体的に提案してみましょう。

便秘や下痢、頻尿など排泄に関する不快感も徘徊につながりやすい要因ですが、身体的な欲求が満たされると徘徊が収まる可能性があります。

日頃から排便のコントロールや定時でのトイレ誘導を心がけ、夜間の徘徊を防げるようにしてみましょう。

落ち着いてから部屋に戻るよう促す

焦って部屋に戻そうとすると、再び不安が高まり逆効果になることもあるため、本人が十分に落ち着いたタイミングを見極めましょう。

以下のように自然な声掛け、本人の世界観に合わせた声掛けで、本人が落ち着いた状態で部屋に戻れるよう促します。

部屋へ戻すための声掛け例
  • そろそろお部屋で休みませんか
  • お茶を用意しましたから、もう一杯どうぞ
  • 夕食もぜひご一緒に
  • 今夜は泊まっていってください

また、本人が好きなことを話題にしたり、得意なことを頼んだりして関心をそらすと、どこかへ帰ろうとしている状態を忘れて落ち着く場合もあります。

無理強いせず、意思を尊重しながら帰室を促しましょう。

夜中の徘徊が起きる理由を知る

夜中の徘徊は、認知症の方にとって意味のある行動です。理由もなく歩き回っているように見えても、その方なりの目的や背景が必ずあります。

徘徊の根本的な原因は、記憶障害や見当識障害といった認知症の中核症状にあります。これに身体的要因、心理的要因、環境的要因が重なることで、行動・心理症状として徘徊が現れるのです。

原因を知ると「問題行動」ではなく「理由のある行動」として捉えられるようになります。

トイレの場所がわからなくなる

住み慣れた家でも、認知機能の低下によってトイレの位置を忘れてしまう場合があります。空間認識能力が衰えると、慣れているはずの場所でも方向がわからなくなる視空間認知障害が起こるのです。

視空間認知障害とは

視力は正常でも、脳の処理機能低下により物体の位置、距離感、形、方向などが正しく把握できなくなる高次脳機能障害で、認知症や脳血管障害で多くみられます。

主な症状
  • 構成障害(図形の模写ができない)
  • 地誌的失見当識(道に迷う)
  • 錯視
  • 幻視 など

トイレに行こうと立ち上がったものの、トイレの場所が思い出せない、探して歩き回るうちにそもそも何を探していたのかも忘れてしまった状態に陥ります。

特に夜間は視認性が悪く、暗闇の中で不安が増し、トイレを探すという最初の目的を忘れ、ただ歩き続ける徘徊につながりかねません。

認知症が中等度以上になると、よく慣れた場所でも方向障害が起きやすくなるため、屋内での徘徊リスクが高まります。

昼夜逆転で生活リズムが乱れている

認知症の方に限らず、日中の活動量が不足したり昼寝をしすぎたりすると、体内時計が混乱します。

認知症、特にアルツハイマー型では、睡眠と概日リズムを司る視交叉上核に初期段階から変化が生じ、この脳の部位が障害されると、体内時計を調整する機能自体が低下し、睡眠・覚醒のリズムが崩れていくのです。

日中に活動しないと体が疲れず、夜になっても眠れません。そして昼間に居眠りが増え、夜を昼と勘違いして活動を始める悪循環に陥ってしまうでしょう。

時間の見当識障害も重なり、未明の4時を夕方の4時と認識して夕食の準備を始めるなど、昼夜を取り違える行動が増えていくのです。

不安や焦りから外に出ようとする

漠然とした不安感や「何かしなければ」という焦燥感が、徘徊を引き起こすことがあります。

認知症になると、これまでできていたことができなくなっていく自分に気づき、不安やストレスを感じるようになり、特に夕方から夜にかけて症状が悪化する「夕暮れ症候群(サンダウニング)」では、不安や混乱が強まりやすいのです。

夕暮れ症候群(サンダウニング)とは

主に認知症の人が夕方になると、不安、混乱、徘徊、幻視、帰宅願望(家に帰ると言い張る)などの興奮状態や不穏な言動を示す症状で、周囲が薄暗くなる環境変化や、1日の疲れによる認知機能低下が要因とされています。

徘徊を引き起こす「不安」や「焦り」、「ストレス」を感じる原因は人により異なりますが、以下のような原因が考えられます。

環境の変化

引っ越しや入院、施設入所などにより生活環境が大きく変わると、心理的な不安が高まりやすくなります。

安心できる感覚が薄れる

見慣れない場所や人に囲まれることで「ここは自分の居場所ではない」と感じ、落ち着きを失うことがあります。

家族の顔が認識できない

身近な人を見知らぬ存在と感じ、恐怖や混乱から衝動的に外へ出てしまうこともあります。

孤独感

一人で過ごす時間が長いと寂しさや不安が増幅し、誰かを求めて歩き回る行動につながる可能性があります。

過去の習慣を思い出して行動する

仕事に行かなければ!

子どもを迎えに行かなくては!

このように過去の記憶に基づいて行動してしまう方もいます。

記憶障害により現状を忘れると、数十年前の習慣が「今すべきこと」として認識されてしまい、定年退職した会社に出社しようとしたり、すでに成人した子どもを幼稚園に迎えに行こうとしたりする行動が見られるのです。

認知症は、短期記憶は失われても長期記憶は比較的保たれるという特性をもっているため、現在の状況は忘れても人生でいちばん輝いていた現役時代の記憶は鮮明に残っています。

時間感覚の混乱により、過去の記憶が現在に侵入し「やらねければならない!」という焦りが生まれます。

これらの行動は、本人にとっては正当な理由があるものですから否定せず、過去の生活史を理解して対応できるようにしましょう。

夜中の徘徊を防ぐための環境づくり

住環境を整え、安全性を高めることで徘徊のきっかけや徘徊による危険を減らしましょう。

大がかりな工事をする必要はありません。家の中を少し工夫するだけでも、本人にとって「わかりやすく安心できる空間」をつくることができます。

以下の4つの工夫は、徘徊のリスクを抑えることにつながり、介護する家族の負担軽減に役立つだけでなく、本人が自分でできることを続けやすくなり、自立を支えることにもなります。

自分で目的地に辿り着ける環境があれば、不安や混乱も和らぐでしょう。

廊下やトイレに足元灯を設置する

夜間の暗さは、不安や混乱を招きやすく、徘徊のきっかけになることがあります。

認知症の方は暗い場所で方向感覚を失いやすく、トイレを探して歩き回るうちに徘徊につながります。足元を優しく照らすセンサーライトの設置で、この問題を解決しましょう。

効果的なのは、寝室からトイレまでの動線に沿った照明の配置で、廊下の床面近くや、トイレの入口に人感センサー式ライトの設置がおすすめ。プラグイン式であれば工事は必要なく、コンセントに差し込むだけで手軽に使えます。

足元灯の明るさにも注意を払いましょう。まぶしすぎる光を見ると驚きますし、かえって目が覚めてしまいます。

足元が確認できる程度の柔らかな明るさで、暖色系の光を選ぶと落ち着いた雰囲気を保てます。センサーライトは自動で点灯するため、スイッチの場所を探す必要がなく、スムーズにトイレへ向かうことができるでしょう。

トイレの場所をわかりやすく表示する

認知症により空間認識能力が低下すると、住み慣れた家でもトイレの位置がわからなくなるので、大きな文字や絵記号を使った視覚的な案内が有効です。

トイレのドア

ピクトグラム(便座に座る人の絵)と「トイレ」という文字を組み合わせた表示を、高さ1.2〜1.4メートルの位置にA3サイズ以上で貼りましょう。

ドア枠を色テープで縁取るだけでも、トイレの入口が一目でわかるようになりますので、一度試してみてください。

廊下の分岐点

分岐点は、矢印を利用して誘導します。「トイレはこちら→」と曲がる手前50センチメートルと、曲がった直後の両方に設置すると、迷わず到達できるようになるでしょう。

色の選び方

認知症の方にとって、背景との明暗差(コントラスト)がはっきりしていることが認識しやすさにつながります。白い壁なら青や赤といった濃い色で表示すると効果的です。

高さ1.2〜1.4メートルの位置は認知症の方が視認しやすい高さとされており、介護度が変化しても対応可能です。

参考元:認知症グループホームにおける居室表記のニーズと諸元の検討

玄関にセンサーを取り付ける

外出を早期に検知するセンサーは、夜中の徘徊予防の強い味方です。玄関のドアにセンサーを設置すれば、ドアが開いた瞬間に音や光、スマートフォンへの通知で知らせてくれます。

介護者が家事をしている間に気づかず外出してしまう事態を防げるでしょう。センサーには下記のように種類がありますので、ご自宅の環境や徘徊状況に合わせて使いやすいタイプを選んでください。

センサーのタイプ
ドア開閉検知タイプ

玄関ドアに小型の機器を取り付けるだけで、ドア開閉を反応する仕組みです。

赤外線センサータイプ

赤外線センサーは玄関を横切ると反応する仕組みです。

マットタイプ

玄関の上がり框に置いて踏むと通知する仕組みです。

とても便利なセンサーですが、認知症の方は環境の変化に敏感になりやすい傾向があります。設置による変化が不安や混乱を招き、結果として症状の悪化につながる場合もあるため、注意が必要です。

センサー取り付け時の注意点
センサーの音

センサーが大きな音で通知すると、本人が不安になったり興奮したりすることがあるため、本人を驚かせない工夫が必要です。

台所やリビングで聞こえる程度の控えめな音量に設定するか、スマートフォンへの通知機能を活用しましょう。

センサー本体

認知症の方の中には、見慣れない機器を取り外してしまう場合もあるため、センサーを目立たない場所に設置することも大切です。

ドア枠の内側や植木の陰など、なるべく視界に入らない位置を選びましょう。

危険な場所に物を置かない

自宅内の動線に物を置かないことで、つまずきや転倒のリスクを減らすことも重視しましょう。徘徊によるケガを防ぐことはもちろん、たくさんの情報を処理することが苦手な認知症の方の混乱を避けることにも繋がります。

物を置かない習慣

まず基本的に階段や段差の付近には何も置かないようにします。夜間は視界が悪く、わずかな障害物でもつまずく危険があります。廊下に新聞や雑誌、バッグなどを置きっぱなしにしない習慣をつけましょう。

床の仕上げ

玄関の黒いマットが、認知症の方には「穴」に見えることがあり、足が止まってしまいます。床は無地で統一し、強い柄物は避けてください。

家具の配置

寝室からトイレへの道のりに、角ばった家具や突起物がないか点検しましょう。ドアは開けたままにしておくと、ベッドからトイレまでの視線が通り、目的地を見つけやすくなります。

電気コード

電気コードも危険です。コードレスのセンサーライトを選ぶか、コードを壁際にしっかり固定して、足に引っかからないようにしてください。

安全な動線づくりは、介護者自身も夜間に移動しやすくなる利点もありますので、是非試してください。

昼間の生活習慣を見直して夜中の徘徊を予防する

日中の活動と休息のバランスを整え、夜間の徘徊の根本的な予防を目指しましょう。

体内時計を正常化し、夜にぐっすり眠れる生活リズムを作っていきます。まずは、以下のリストにあるような薬や設備に頼らず、日常生活の工夫だけで改善できる方法から始めましょう。

生活リズムの乱れは、夜間の徘徊や不穏行動の背景にあると指摘されています。介護サービスの利用や散歩など、生活習慣を整えることで、夜間徘徊の頻度を大幅に減らせる可能性があるのです。

また、毎日の生活にリズムを持たせることは、症状を軽減させる鍵となる場合があります。

デイサービスで活動量を増やす

デイサービスでの様々な活動は、適度な身体的疲労を生み出すだけでなく、家族以外の方と交流することで精神的にも充実し、結果、夜間にぐっすり眠れるようになります。

国立長寿医療研究センターの調査でも、運動習慣を持つ高齢者は持たない高齢者と比べて、認知症になる割合が少なかったと報告されていることからも、デイサービスでの活動は大きなメリットを持っています。

身体的活動量の増加

デイサービスでは運動・レクリエーション・体操・機能訓練・趣味活動など、一人ひとりに合わせたプログラムが用意されており、無理なく活動量を増やせます。

社会的交流

家族以外の人と会話を楽しんだり、笑ったりすることで、脳内にドーパミンが放出され、精神的な充足感をもたらします。孤独感が軽減され、夜の不安も減っていきます。

利用頻度・時間の調整

可能であれば週に1回よりも週に2〜3回利用する方が、生活リズムが整いやすくなります。午前中から利用できるデイサービスを選ぶと、朝の起床時間が規則的になり、体内時計の調整にもつながります。

日中に散歩や軽い運動をする

階段の上り下りや、家事など、自宅や近所でできる簡単な運動も立派な効果的身体活動です。

中でも散歩は特におすすめで、1日30分を週3回以上行うことが推奨されており、近所を歩くだけでも十分な運動になります。無理なく続けられる運動量を心がけましょう。

運動ワンポイントアドバイス
  • 運動は、息が少しはずむ程度の強度で、転倒に注意しながら行います。
  • 歩きながら数を数える、簡単なしりとりをするなど、頭を使う要素を加えるとさらに効果的です。

ただし体調に不安がある場合は、必ず医師に相談してから始めてください。

参考:Exercise is associated with reduced risk for incident dementia among persons 65years of age and older

昼寝の時間を短くする

認知症の方に限らず、適度な昼寝は脳の疲労回復に役立ちます。しかし、長時間になると体内時計が乱れて昼夜逆転し、夜間の睡眠を妨げる原因に。1時間を超えると、夜に眠れなくなります。

認知症の方は、昼寝が増えて夜間は眠らず興奮状態になるという、不規則な睡眠リズムに陥りやすい特徴があります。理想的な昼寝は、午後1時~3時の間に20〜30分以内を目安とした短時間で、脳疲労が軽減され、就寝までの覚醒状態を適正に維持する効果が期待できます。

昼寝を短くする工夫
  • 昼寝の直前にコーヒーや紅茶を飲むと、カフェインが15分後に効き、自然に目が覚めやすくなります。
  • 昼食後に長時間座ったままにせず、軽い活動をします。
  • テレビを見ながら寝てしまわないようにするため、リビングから寝室への動線を意識的に作ります。

どうしても眠そうな場合は、横にならず椅子に座った姿勢で休むよう声をかけてください。夜にしっかり眠れるように、日中の睡眠時間を管理しましょう。

参考:グループホームに入居する軽・中等度の認知症高齢者における睡眠の改善に対する昼寝と軽運動による介入プログラムの効果

夕方以降の刺激を減らす

夕方から就寝前の興奮や刺激は、睡眠の質を下げます。以下を参考に刺激を減らす工夫をしてみてください。

テレビの音量は控えめに

大音量のニュースやドラマは、興奮や不安を引き起こします。できれば夕方以降は穏やかな音楽や、落ち着いた番組を選んでください。

照明の調整

明るすぎる照明は覚醒を促してしまいます。夕方以降は間接照明や暖色系の照明に切り替え、就寝の1〜2時間前には部屋全体を薄暗くしていくとよいでしょう。

外が暗くなるのを見て不安になる方もいるため、早めにカーテンを閉めるのも一案です。

来客対応

来客も夕方以降は避けた方が無難です。慣れない人との会話は精神的な疲労を増やし、興奮状態を引き起こします。

リラックスできる夜の過ごし方として、好きな趣味に取り組んだり、家族との穏やかな会話を楽しんだりする時間を作りましょう。規則正しい夜の習慣が、良い睡眠へとつながります。

徘徊対策に使える見守りグッズ

テクノロジーを活用して徘徊の予防・早期発見・安全確保を行いましょう。グッズを選ぶ際は、介護状況に合わせて判断してください。

スクロールできます
見守りグッズ特徴メリット費用目安
GPS端末位置情報を追跡できる種類が豊富初期費用:2,000円~1万円程度(スマートタグなど)

維持費用:数百円~数千円
離床センサーベッドからの起き上がりを検知転倒や徘徊を未然に防げる検知装置:2万円程度~
マットタイプ:4万円程度~
ネームタグ身元が分かる発見時に身元がすぐ分かる比較的安価(1,000円程度~)

夜間の徘徊が多いならセンサー類を、外出後の行方不明が心配ならGPSを優先しましょう。本人が嫌がらない方法を選ぶために、いくつか試してみるほうがよいケースもあります。

GPS端末で居場所を把握する

外出後の位置情報をリアルタイムで追跡できるGPS機器があります。その種類も豊富で、それぞれの方に合わせた形状や機能、精度などを選ぶことが可能です。

GPS機器の種類
キーホルダー型

小型で、バッグや衣服に取り付けられます。

スマートウォッチ型

腕時計のように身につけるため、違和感が少なく、高齢者も受け入れやすい形状です。

シューズ用

靴の中にGPS端末を収納できるため、外出時に必ず身につけるため確実です。

位置情報の精度

最新の2周波GPSは、従来のGPSよりも測位誤差を小さくでき、高いビルや木々に囲まれた場所でも、より正確な位置を特定できるとされています。

更新頻度

製品によって異なり、数分ごとに自動で測位するものから、アプリから手動で更新するものまであります。

バッテリー持続時間

毎日充電が必要なタイプと、数日間持つタイプがあります。認知症の方は充電を忘れがちなため、充電の頻度が低いもの、家族が毎日の生活の中で充電しやすいものを選ぶほうが使いやすいです。

離床センサーでベッドからの起き上がりを検知する

起き上がりを早期に検知するための、ベッドや布団の下に敷くセンサーマットがあります。夜間にベッドから降りて徘徊し始めることが多い方は、徘徊前の段階で対応できるため、外出を未然に防ぐことが可能です。

離床センサーの仕組みはシンプルです。ベッドの足元やベッドパッドの下に設置したマット状のセンサーが、重量の変化を感知すると別室にいる家族にチャイムやメロディーで知らせます。

ただし、起き上がり回数などによって頻繁にセンサー音が鳴ることで本人が消してしまったり、不快と感じたりするかもしれません。また感度も機器によって異なるため使いやすいものを探す必要があるでしょう。

費用が自宅用で数万円台なので、まずはより安価な玄関センサーなどを試してから導入を検討する方法もあります。

身元証明できるネームタグを身につける

迷子になった際に身元が分かるネームタグやシールが、発見後の保護を助けます。

QRコード付きのネームタグ

スマートフォンでQRコードを読み取ると家族の連絡先が表示されます。個人情報を直接記載しないため、プライバシーを守りながら連絡手段を確保できます。

千葉市のようにQRコード付きシールを無料で配布している自治体もありますし、自分でも1,000円程度から購入可能です。

ネームタグの取り付け

取り付け場所は工夫次第で目立たなくできます。衣服の裾や襟の裏側にアイロンプリントで貼り付ける、杖やシルバーカーにキーホルダー型のタグを取り付ける、靴の内側にシールを貼るなどの方法があります。

本人が嫌がらず、発見者が気づきやすい場所を選びましょう。

個人情報について

個人情報保護と発見時の連絡手段のバランスも考慮してください。名前や住所を直接記載すると不特定多数に見られる心配がありますが、QRコードなら読み取り時だけ情報が表示されます。

連絡先は複数登録できるタイプを選ぶと、家族や施設など複数の窓口を用意できて安心です。

ネームタグタイプのGPSにはアクセサリー風のデザインもあり、認知症の方にも受け入れられやすくなっています。大きな設備投資とは異なり、安価ですぐにできる対策の1つですので、是非お試しください。

行方不明になったときの対応手順

徘徊により行方不明になった際は、時系列に沿った初動対応が生存率を左右します。短期間で所在確認できず、発見が遅れるほど危険が増しますので、発生時に無駄のない行動ができるように準備しておくと安心です。

万が一の時にパニックにならず迅速かつ、組織的に対応できるよう、冷静に行動するための対応とその優先順位を押さえましょう。

近所の馴染みの場所を探す

過去によく行った場所を優先的に探すと、早期発見の可能性が高まります。

認知症の方は記憶障害があるため、現在ではなく過去の習慣に基づいて行動します。

一般的な探し場所の候補
  • 元職場
  • 昔住んでいた家の方向
  • よく通っていた公園
  • なじみの商店街
  • かかりつけの病院
  • デイサービスの施設
  • 子ども時代の遊び場など

事前に生活歴や習慣から推測できる駅やバス停、コンビニなど、本人がよく立ち寄る場所含めて行き先をリスト化しましょう。普段一緒に住んでいない方は、ケアマネジャーやご近所の人に聞くとわかる情報もあります。

家族だけで探せる範囲は自宅から半径2km程度、時間の目安は20〜30分です。それ以上探しても見つからなければ、すぐに警察に連絡する段階に移ります。

闇雲に探すより、心当たりのある場所を効率的に回る方が発見率は上がるとされています。

すぐに警察に捜索願を出す

行方不明が確認されたら、少し待ってからではなく、すぐに警察に捜索願(行方不明者届)を提出することが、徘徊している方の命を守ります。認知症の場合は「特異行方不明者」として扱われ、警察が積極的に捜索してくれます。

愛知県警察のデータによると当日発見でも21%の方が亡くなっており、翌日発見で亡くなった方31%と合わせて約半数を占めています。通報の遅れが生存率に直結するといってよいでしょう。

捜索願(行方不明者届)の出し方
STEP
最寄りの警察署へ連絡・来署

まずは管轄の警察署、または110番に連絡します。

STEP
伝える主な情報

届け出の際には、次のような情報を求められます。

  • 氏名・年齢・住所
  • 身長・体型・服装
  • 持ち物(携帯電話・財布など)
  • 持病や認知症の有無
  • 最後に確認された日時・場所
  • 最近の様子や行動の変化

写真があると、捜索に役立ちますので、顔がはっきり写った最近のものを用意しましょう。

STEP
費用について

捜索願(行方不明者届)の提出に費用はかかりません。

警察が動き出すまでの流れは速やかで、届け出後は警察官がパトロール中に該当者を探してくれます。

警察や周囲に協力を求めることをためらう方は少なくありませんが、家族だけで1~2時間探してからでは遅いのです。

地域包括支援センターに連絡する

地域包括支援センターが持つ地域ネットワークで、地域の介護事業所や民生委員に協力を求められる利点があります。担当のケアマネジャーがいる場合ももちろん相談してください。

福祉関係者は長年の経験から「○○にいるかも?」という捜索のコツを持っており、横のつながりから他の事業所のスタッフが発見してくれることもあります。

連絡先の確認方法は、市区町村のホームページで「地域包括支援センター」を検索するか、市役所の福祉課に問い合わせてください。伝えるべき情報は、行方不明者の氏名、身体的特徴、服装、行方不明になった時刻、普段の行動パターンです。

SOSネットワークの活用

いくつかの市町村では行政・警察署・市民などが連携してつくった連絡網「認知症の人の見守り、SOSネットワーク(認知症高齢者等SOSネットワーク)」を構築しています。

SOSネットワーク(認知症高齢者等SOSネットワーク)とは

認知症などで徘徊・行方不明になった高齢者を地域・警察・行政が連携して早期発見・保護するシステムです。事前登録された特徴情報を基に、協力機関へメールやFAXで一斉配信し、地域全体で見守り・捜索を行います。

行方不明になったときに素早く捜し始められる体制で、事前登録制度もあるため、あらかじめ登録しておくと速やかな発見が可能になります。

近隣に協力をお願いする

ご近所や自治会、商店街などに情報提供を依頼すると、捜索の目を増やせます。具体的な依頼方法は、近所の方々に事情を話し「もし一人で歩いていたら連絡をください」とお願いします。

本人がよく立ち寄りそうな場所やお店にも事前に話をしておくと効果的です。徘徊SOSネットワークがない地域では、家族が周囲へ協力を仰がなければなりません。

その他の捜索方法
チラシの配布

チラシを作成して配布する方法もあります。顔写真、身体的特徴、服装、連絡先を記載したチラシを近隣に配ることで、発見者がすぐに連絡できます。

SNSの活用

SNSを使った情報拡散も効果的ですが、個人情報の取り扱いには注意が必要です。公開範囲を限定し、発見後は速やかに投稿を削除しましょう。

日頃からの地域関係づくりが、緊急時に生きる重要性を実感した家族は少なくありません。事前に認知症なことを近所に伝えておく必要がありますが、実際には内緒にしている場合もあるでしょう。

そのため地域関係をすぐに活用できないと感じるかもしれません。しかし、いざというときの捜索協力者や人の目はやはり多ければ多いほど見つかる可能性が高まる点は知っておきたいものです。