透析になると生活はどう変わる?知っておきたい制限と続け方

透析になると生活はどう変わる?知っておきたい制限と続け方

親や家族が透析を始めることになった。そんなとき、まず頭に浮かぶのは「これからの生活はどうなるのか」という心配でしょう。通院の回数、食事の制限、仕事や趣味との両立。気になることは山ほどあるのに、情報がバラバラで全体像がつかめないまま不安だけが膨らんでいくかもしれません。

日本透析医学会の統計調査によると、2024年末時点で国内の透析患者数は約33万7,414人にのぼります。

これだけ多くの方が透析を続けながら日常を送っている事実は、治療と生活の両立が決して不可能ではないことを示しています。まずは正しい知識を持つこと。それが、患者本人にとっても家族にとっても、穏やかな透析生活の出発点になります。

この記事では、透析生活で変わることと変わらないことを整理し、治療の種類による暮らし方の違いや、食事・水分の管理で押さえておきたい具体的なポイントまで、まとめて解説します。

目次

透析が始まると生活はどう変わるのか全体像を知る

透析治療は、働きが低下した腎臓の代わりに、血液中の老廃物や余分な水分を取り除く治療です。治療そのものは医療機関で受けられますが、生活面では通院スケジュールの確保や食事内容の見直しなど、いくつかの調整が必要になります。

ただし「透析=何もできなくなる」というわけではありません。

仕事を続ける方、旅行を楽しむ方、趣味に打ち込む方も多くいます。大切なのは、透析によって生活のどの部分がどう変わるのかをあらかじめ知っておくことです。

ここでは、通院や治療時間が日常に与える影響と、治療方法ごとの暮らし方の違いを整理していきましょう。

通院の頻度や治療時間が日常の生活リズムに与える影響

血液透析を受ける場合、以下のスケジュールが一般的とされています。病状によっては回数が増えることもありますが、日常生活はこのリズムを軸に組み立てていくことになります。

一般的な透析スケジュール
治療回数

週3回

1回あたりの治療時間

4〜5時間程度

診療報酬制度ではこの週3回のペース(月14回)が標準的な回数とされており、多くの方が月・水・金、または火・木・土といった曜日で通院しています。

透析の時間帯は、午前・午後・夕方以降の枠を設けている施設が多く、仕事を続けている方は夜間透析を選択することで勤務時間との両立を図ることも可能です。なかには就寝中に行うオーバーナイト透析を実施している施設もあり、日中の時間を有効に使えるケースもあります。

ただし、透析日はある程度まとまった時間を治療に充てる必要があります。透析そのものの4〜5時間に加えて、通院の移動時間や治療後の止血・休息まで含めると、半日ほどを透析に使うイメージになります。そのため、透析のある日とない日では生活リズムに違いが生まれやすくなります。

透析スケジュールの注意点

週3回のスケジュールでは1回だけ中2日空く間隔ができるため、その前後で体内に水分や老廃物がたまりやすく、体の重さやだるさ、むくみなどを感じる方もいます。

この感覚には個人差がありますが、透析生活のリズムを考えるうえで知っておきたい特徴です。

こうした変化を踏まえると、透析の曜日や時間帯を自分の生活スタイルに合わせて選ぶことが大切になります。施設の空き状況などによる制約はあるものの、時間帯の変更や夜間透析への移行、通院先の見直しなど、主治医や医療スタッフに相談しながら調整できる部分も少なくありません。

血液透析と腹膜透析で異なる暮らし方の特徴

透析治療には大きく分けて「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があり、それぞれ暮らし方への影響がまったく異なります。

血液透析

腕につくったシャント(血管のつなぎ目)に針を刺し、血液を体外の機械に通して老廃物を除去する方法です。

日本透析医学会の2024年末の統計調査によると、国内の透析患者の95%以上が血液透析を選んでおり、国内では圧倒的に多い治療法といえます。

治療は医療機関で行うため、週3回の通院が必要になりますが、治療中は読書やテレビ視聴などが可能で、医療スタッフが常に見守っている安心感があります。一方、通院日と時間が固定されやすいため、仕事や外出の予定に制限を感じる場面が出てきます。

腹膜透析

おなかの中に透析液を入れて、自分の腹膜を利用して血液をきれいにする方法です。

自宅で行えるため通院は月1回から2回程度と少なく、日中の自由度が高いのが特徴です。透析液の交換は1日に数回行うCAPD(連続携行式腹膜透析)と、夜間に機械で自動交換するAPD(自動腹膜透析)があり、生活スタイルに合わせて選べます。

腹膜透析は体への負担が比較的少なく、残っている腎臓の機能を長く保ちやすいとされています。食事制限も血液透析と比べてやや緩やかな面がありますが、腹膜の働きには個人差があり、数年から10年前後で治療法の変更を検討することがあります。その後は血液透析への移行や腎移植を検討する場合があります。

また、おなかに入れたカテーテルの管理を自分で行う必要があるため、感染症を防ぐための衛生管理が欠かせません。

どちらの治療にもそれぞれの良さと注意点があります。患者本人の生活状況、仕事の有無、体力、家族の協力体制などを踏まえ、主治医と一緒に自分に合った治療法を選ぶことが、長く続けるうえで欠かせないステップです。

透析生活で必要になる食事と水分の管理を理解する

透析を始めると、治療そのもの以上に日々の暮らしで意識することになるのが食事と水分の管理です。

腎臓の機能が低下すると、塩分やカリウム、リンなどの成分を尿から排出しにくくなり、体内にたまりやすくなります。そのままにしておくと高血圧や心臓への負担、骨のもろさといった合併症につながる可能性があるため、食べる内容と量に気を配る必要が出てきます。

とはいえ「食べてはいけないもの」があるわけではありません。制限すべき栄養素と、その理由を知っておくだけで、毎日の食事は格段に組み立てやすくなるでしょう。ここから、具体的な栄養素の考え方と水分管理のポイントをみていきます。

塩分やカリウムなど意識したい栄養素の考え方

透析中の食事で気をつけたい栄養素
  • 塩分
  • カリウム
  • リン

それぞれ制限する理由と目安量が異なるため、順番に整理していきましょう。

塩分

1日6g未満が目標です。

塩分をとりすぎるとのどが渇いて水分を多く飲んでしまい、体内の水分量が増えて血圧上昇やむくみの原因になります。つまり、塩分の制限は水分管理にも直結します。

カリウム

血液透析の場合1日2,000mg以下を目安とします。

カリウムが血液中にたまると高カリウム血症を引き起こし、しびれや脱力感、重い場合は不整脈や心停止にもつながりかねません。

カリウムが多い食品
  • バナナ
  • メロン
  • ほうれん草
  • 芋類
  • ドライフルーツなどに多く含まれます。

野菜は細かく切ってからゆでこぼすことでカリウムを減らせるため、調理法の工夫が効果的です。

なお、腹膜透析では毎日少しずつ透析液にカリウムが排出されるため、血液透析ほど厳しい制限は不要なことが多いですが、血液検査の結果に応じて主治医の指示に従う必要があります。

リン

1日のリン摂取目安は「適正なたんぱく質摂取量(グラム)×15ミリグラム」以下が一つの基準です

たんぱく質を含む食品に多く含まれ、過剰になると骨がもろくなったり血管の石灰化を招いたりします。

無機リン(リン酸塩)に注意

とくに注意したいのが加工食品に含まれる無機リン(リン酸塩)で、ハムやソーセージ、練り物、インスタント麺などの食品添加物として使われています。

無機リンは有機リンに比べて腸からの吸収率が高い(約90%)ため、少量でも影響が大きい点に気をつけてください。

一方で、たんぱく質は透析患者にとって低栄養を防ぎ、筋肉量や免疫機能を維持するために不可欠な栄養素です。日本透析医学会の「慢性透析患者の食事療法基準」では、安定した血液透析患者のたんぱく質摂取量を標準体重1kgあたり0.9~1.2g/日としています。リンを減らしたいからといってたんぱく質まで極端に控えるのではなく、リン含有量が少ない食品を選ぶ工夫が大切です。

検査値は個人によって大きく異なります。定期的な血液検査の結果を確認しながら、主治医や管理栄養士と相談して調整していくことをおすすめします。

透析の間隔に合わせた水分量の調整が求められる理由

血液透析を受けている方は、腎臓の働きが低下しているため、飲んだ水分を尿として十分に出すことができません。そのため、透析と透析の間には体の中に水分が少しずつたまっていきます。この増えた水分は体重の増加として表れるため、透析では体重の変化を見ながら体液量を管理します。

透析後には「ドライウェイト」と呼ばれる目標体重が設定されますが、透析と透析の間で体重が大きく増えると、次の透析で短い時間のうちに多くの水分を取り除かなければならなくなります。

ドライウェイトとは

これは体の中に余分な水分や塩分がなく、血圧や体調が安定し、心臓への負担が少ない「適正体重」のことです。

日本透析医学会の維持血液透析ガイドラインでは、1時間あたりの除水量(除水速度)は15mL/kg/時未満を目標とすることが示されています。除水のスピードが速くなりすぎると、透析中の血圧低下や臓器への血流不足が起こりやすくなり、心臓や体への負担が大きくなるためです。

また、透析の間隔が長くなると、その分だけ水分が体にたまる時間も長くなります。同じように過ごしていても除水量が増えやすくなり、透析中の負担も大きくなります。

このことから、透析の間隔に合わせて体重の増え方を調整することが、除水のスピードを適切に保ち、透析を安全に受けるために大切とされています。

外食や間食を楽しむときに気をつけたい選び方

慢性透析患者の食事療法では、必要なエネルギーとたんぱく質を確保しながら、食塩・リン・カリウムを過剰にしないことが重要です。日本透析医学会の慢性透析患者の食事療法基準でも、食事内容は一律に制限するのではなく、体格・透析間体重増加量・検査値・栄養状態などをもとに1日全体のバランスで個別に調整することが基本とされています。

外食や間食も「食べてはいけないもの」と考えるのではなく、日常の食事との組み合わせで調整していくことが大切です。

外食

外食では、次の3つを意識すると負担を減らせます。

外食時の3つのポイント
①汁物やスープは残す

ラーメンやうどんの汁、味噌汁には塩分と水分が多く含まれています。麺だけ食べて汁を残すだけで、塩分と水分の摂取量をかなり抑えられます。

②肉や魚の量を見積もる

定食やセットメニューは、おかずの量が多くなりがちです。たんぱく質の多い主菜を3分の1ほど残すことで、リンやカリウムの摂取も同時に減らせます。

③生野菜や果物に注意する

サラダや生の果物にはカリウムが多く含まれます。付け合わせの生野菜やデザートのフルーツは少量にとどめておくと安心です。

また、減塩しょうゆや減塩ソースを持ち歩くのも一つの方法です。外食先で調味料を使うとき、自分で塩分量を調整しやすくなります。

間食

間食については、甘いものやスナック菓子がすべてだめということではありません。透析患者は治療中にエネルギーが消費されるため、3回の食事だけではエネルギーが不足することもあります。その場合、間食は栄養状態を保つために役立ちます。

選ぶときに気をつけたいのは、たんぱく質とリンが少ないものを選ぶことです。

リンが少ない
エネルギーを補いやすい
リンが多い
食べる量に注意
水ようかん

マシュマロ
ゼリー など
チーズ
ナッツ類
牛乳を使った洋菓子 など

外食や間食は生活の楽しみであり、制限ばかりに目を向けると続けることが苦痛になります。食べてよいものの中から選ぶという発想に切り替えると、食事療法は格段に続けやすくなるでしょう。困ったときは、通院先の管理栄養士に具体的なメニューの相談をしてみてください。

透析を受けながら仕事や家事を続けるための工夫

これまでと同じように働けなくなるのではないか

仕事を続けるのは難しいのではないか

透析治療が始まると、週3回・1回あたり4〜5時間の通院が生活に加わるため、このように不安を感じる方も少なくありません。しかし、透析を受けながら仕事を続けている方は多く、社会復帰は十分に可能とされています。

実際には、透析のスケジュールに合わせて勤務時間を調整したり、通院日と仕事量のバランスを工夫したりすることで、無理のない働き方を見つけている方がたくさんいます。家事についても、体調に合わせて行う内容や時間帯を変えたり、家族と役割分担をしたりすることで、日々の暮らしを維持することができます。

ここからは、仕事と家事それぞれについて、透析と両立するための具体的な工夫を整理していきます。

勤務時間や働き方を調整して両立している人の傾向

血液透析では週3回・半日程度の通院が必要です。この時間を確保するために、フレックスタイム制やシフト制を活用して勤務時間をずらしたり、夕方以降に透析を行う施設を選んで日中は通常どおり働くといった方法をとっている方がいます。

厚生労働省は「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を策定しており、主治医意見書や勤務情報提供書を使って医療機関と職場が連携する仕組みが整えられています。2026年4月からは改正労働施策総合推進法の施行により、両立支援が事業主の努力義務となります。

透析開始を機にすぐ退職を決断するのではなく、職場の人事担当者や産業医に通院スケジュールと体調面の制約を伝え、どの程度の配慮があれば就労を継続できるかを話し合ってみてください。

家事や育児の負担を分担するために整理したいこと

透析治療のある日は、通院や治療に多くの時間を要するため、家事や育児に充てられる時間が限られます。こうした状況ですべてを一人で担おうとすると、心身の疲労が蓄積しやすくなります。

そのため、日頃から家族と話し合い、無理のない形で役割分担を決めておくことが大切です。介護や生活の支えは一人で抱え込むものではなく、周囲と協力しながら続けていくという視点が、長く治療と生活を両立していくための助けになります。

取り組みやすい家事の方法
  • 透析のある日とない日で家事の内容を分ける
  • 体力を使う買い物や掃除は透析のない日にまとめる
  • 治療日は軽い作業だけにとどめる
  • 家族全体で薄味を基本にすることで、別々のメニューを用意する手間を省く

透析患者は身体障害者手帳の取得が可能で、障害福祉サービスや介護保険を通じた家事援助・通院支援も利用対象となる場合があるため、まずはお住まいの市区町村の福祉課やソーシャルワーカーに確認してみてください。

透析を長く続けるために欠かせない通院と体調の自己管理

透析治療は一度始めると、基本的には生涯にわたって続けていく必要があります。

長い治療期間を安定して過ごすには、定期的な通院を欠かさないことに加え、日々の体調変化に自分で気づく力を身につけることが求められます。ここでは、通院・検査データの管理、シャントの保護、体のサインの読み取り方について、それぞれ確認していきましょう。

定期的な通院と検査データの確認が大切な理由

透析治療では、カリウムやリン、ヘモグロビンなどの検査データを定期的に評価します。これらの数値は透析量の適正や栄養状態、薬物療法の効果を反映する指標であり、その推移を継続的に確認することが合併症の予防と早期対応につながります。

日本透析医学会の各種ガイドラインでは、血圧管理、CKD-MBD(骨・ミネラル代謝異常)、感染症対策、腎性貧血の管理などを適切な検査値に基づいて行う重要性が示されています。

さらに、日本透析医学会の2023年統計では、透析患者の年間死亡原因の第1位は感染症(22.7%)、第2位は心不全(20.4%)と報告されています。

これらはいずれも日常の体液管理や栄養状態の維持、貧血管理などと深く関連しており、検査値の変化を早期に捉えて治療内容を調整することが、重症化の予防と長期予後の改善に不可欠です。

検査結果を「医師任せ」にせず、毎回の数値を自分でも確認して前回との違いに目を向ける習慣が大切です。小さな変化に気づければ、医師への相談のタイミングを逃しにくくなります。

シャント部分を守るために日常で注意したい動作

シャントは動脈と静脈を吻合して作製された血管アクセスであり、血液透析を安全かつ十分に行うために不可欠です。

日常生活ではシャント肢の血流を保つことが重要で、シャント側を下にして就寝する、重い荷物を持つ、腕時計やきつい衣類を装着する、血圧測定や採血を行うといった行為は、血管の圧迫や損傷につながるため避ける必要があります。

アクセス機能を維持するためには日々の観察が欠かせません。スリルや血流音の変化、拍動の減弱は狭窄や閉塞を示唆する所見であり、異常に気付いた場合には速やかに透析施設へ相談することが推奨されています。

穿刺部の清潔保持を徹底し、発赤・腫脹・疼痛などの炎症所見の有無を確認することが重要です。

むくみや血圧の変化など早めに気づきたい体のサイン

透析治療を続けていくうえで、体調の小さな変化に早く気付くことは合併症の予防につながります。とくに意識しておきたいのが、むくみと血圧の変動です。

腎機能が低下して尿量が少なくなると、体の中に余分な水分がたまりやすくなります。その結果、まぶたや手足のむくみ、体重の増加、血圧の上昇、息苦しさなどが現れることがあります。水分管理の目安は尿量に応じて設定されることが多く、日々の体重を測定して増減を確認する習慣が重要です。

血圧も注意深く見ておきたいポイントです。透析を始めたばかりの時期は高血圧になりやすく、頭痛や落ち着かない感じ、眠りにくさなどがサインになることがあります。一方で、透析中や透析後には血圧が下がり、あくび、冷や汗、めまいといった症状がみられる場合もあります。

こうした変化を「よくあること」と自己判断せず、体重・血圧・その日の体調を記録しておくこと、そして気になる症状があれば受診日を待たずに医療スタッフへ伝えることが大切です。

早めの相談が、安全に透析を続けることにつながります。

透析にかかる医療費と活用できる公的支援制度を確認する

透析治療の医療費は約40万円が一つの目安とされています。年間では約500万円となり、長期治療であることを考えると経済的な不安を感じる方も少なくありません。

ただ、日本には透析患者の負担を大きく減らす公的制度がいくつも整備されています。知らないまま申請しなければ、使えるはずの制度を見逃してしまうことにもなりかねません。

ここでは、特定疾病療養費による医療費の軽減や、障害者手帳で受けられる助成・福祉の内容を順に見ていきましょう。

年間の医療費負担と特定疾病療養費による軽減の仕組み

透析の医療費は、3割の自己負担で計算しても月額12万円前後。ここで活用したいのが「特定疾病療養受療証」の制度です。

特定疾病療養受療証で自己負担額減

慢性腎不全による人工透析を受けている場合は、高額療養費における高額長期疾病(特定疾病)に該当します。加入している健康保険に申請して「特定疾病療養受療証」の交付を受ければ、医療機関の窓口で支払う自己負担額は月額1万円が上限となります。一定以上の所得がある70歳未満の方は月額2万円が上限です。

申請先は、国民健康保険の場合は市区町村の保険課、協会けんぽは各都道府県支部、そのほかの健康保険は加入する保険者の窓口です。受療証は申請した月の初日から適用されるため、透析導入後はできるだけ早く手続きを行うことが大切です。

身体障害者手帳との併用

身体障害者手帳を取得して自立支援医療(更生医療)を併用すると、医療費の自己負担は原則1割となり、所得に応じた月額上限が設定されます。これらの制度を組み合わせることで、透析医療の窓口負担は月0円~2万円程度に収まるケースが多いとされています。

ただし、入院時の食事代や差額ベッド代は助成の対象外です。また、外来・入院・薬局はそれぞれ別に計算される点にも注意してください。

障害者手帳の取得で受けられる助成や福祉サービス

透析療法を受けている方は、申請により身体障害者手帳の交付対象となります。等級は医師の診断書・意見書をもとに判定されますが、維持透析を必要とする慢性腎不全は日常生活への影響が大きい状態であり、重度の障害として認定されるケースも多くなっています。

身体障害者手帳で利用できる主な助成・福祉
重度心身障害者医療費助成制度重度心身障害者医療費助成制度手帳1・2級の方が対象
医療機関受診時の自己負担分を自治体が助成する制度
助成内容や自己負担の有無は自治体ごとに異なる
税金所得税・住民税の障害者控除
相続税の障害者控除
自動車税の減免など
交通費JR運賃の割引(条件あり)
有料道路の通行料金割引
航空運賃の割引(国内線)
NHK放送受信料NHK放送受信料の減免
携帯電話料金携帯電話料金の割引(各事業者の障害者向けプラン)
障害年金の受給

日本年金機構の認定基準では、人工透析を受けている方は原則として障害年金2級に該当するとされています。厚生年金に加入していた時期に初診日がある方は、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受給できる可能性があります。

ただし、医療費助成の名称や所得制限、サービス内容は自治体によって異なります。実際に利用できる制度を確認するには、住んでいる市区町村の障害福祉窓口や、通院先の医療ソーシャルワーカーへ相談するのが確実です。手続きの方法や必要書類についても具体的に案内してもらえるため、早めに情報を集めておくと安心です。

透析と向き合いながら自分らしい生活を続けるために

週3回、1回あたり約4時間の通院。透析が始まると、生活のリズムは確かに変わります。「もう旅行には行けないのでは」「家族に迷惑をかけるのでは」。そんな思いを抱えている方もいるかもしれません。

けれども、事前の準備を整えれば旅行もできますし、家族が無理なく関わっていく方法もあります。制度や工夫を知っているかどうかで、日常の自由度は大きく変わってきます。

旅行や外出を楽しむために必要な事前準備と届け出

透析を受けていても、旅行は可能です。旅行を計画する際の準備は、大きく分けて4つのステップがあります。

旅行のための4つの準備
STEP
主治医への相談と許可

まず、かかりつけの医師に旅行の計画を伝えます。体調や合併症の有無を踏まえ、旅行が可能かどうかの判断を受けましょう。体重や血圧、カリウムの値が安定していることが前提条件になります。

STEP
旅行先の透析施設を探して予約

血液透析の場合、透析を受けない日が中2日以上空くと老廃物や水分がたまり体に負担がかかります。旅行先で透析を受けられる施設(臨時透析)を探し、電話で受け入れの可否を確認してください。

かかりつけの施設に相談すれば、旅行先の施設名簿を教えてもらえることもあります。

STEP
書類の準備と送付

主治医に紹介状と透析条件(血流量、ドライウエイト、透析時間、シャントの場所など)を記載した診療情報提供書を作成してもらいます。多くの施設では事前送付を求められるため、余裕をもって手配しましょう。

STEP
当日の持ち物

健康保険証、特定疾病療養受療証、身体障害者手帳、定期薬、止血ベルト。これらは忘れずに携帯してください。施設によってはパジャマやタオルの持参が必要な場合もあるので、事前確認が欠かせません。

旅行先での透析費用は、健康保険と特定疾病療養受療証が使えます。ただし、自治体独自の医療費助成は他県では適用されないことがあります。その場合は、帰宅後に居住地の市区町村で手続きすれば、助成分の支給を受けられます。

腹膜透析では、透析液や関連物品を宿泊先へ事前配送することで旅行が可能です。処方内容に基づいた物品手配、宿泊先での保管場所の確認、バッグ交換を行う場所の確保などを事前に調整しておくことで、通常と同じ治療を継続できます。

旅行は気分転換にとどまらず、ふだんと異なる施設で透析を経験しておくという意味でも意義があります。災害時にかかりつけの施設が使えなくなった場合に備え、複数の施設での透析経験が役に立つからです。

本人と家族が無理なく生活を整えていくための考え方

透析治療は、本人だけでなく家族の生活にも大きな影響を与えます。週3回の通院の送迎や食事管理、各種手続きなどを家族だけで担おうとすると、知らず知らずのうちに心身の負担が重なってしまいます。

透析の負担軽減のために

こうした負担を軽減するために、公的な支援制度を活用することが大切です。

65歳以上の方は介護保険制度、64歳以下の方は障害福祉サービス(障害者総合支援法)の対象となり、必要に応じて生活支援を受けることができます。これらのサービスを利用することで、家族だけに頼りきりにならない透析生活を整えることが可能になります。

在宅サービスの併用

デイサービスやショートステイ、訪問看護などの在宅サービスを組み合わせることで、通院や日常生活の負担を分散できます。

支援を上手に取り入れることは、安心して治療を続けるためだけでなく、家族が無理なく関わり続けるためにも重要です。

食事管理

食事面では、塩分やカリウム、リンの摂取制限が必要になりますが、毎食ごとに厳格に管理するよりも、1日単位で調整するほうが続けやすいでしょう。

昼食で塩分を多くとったら夕食で控える、といった工夫で外食も楽しめます。管理栄養士から個別の指導を受けておくと、日々の献立に迷うことが減ります。

精神的ケア

精神面の変化にも目を向けておく必要があります。透析導入をきっかけに気持ちが落ち込む方は少なくありません。

「一生続く治療」という現実を受け入れるまでには、本人も家族も時間がかかるものです。つらい気持ちを感じたときは、通院先の医療ソーシャルワーカーや臨床心理士に相談できます。

家族の工夫

家族ができる一つの工夫として、自宅では透析以外の話題も意識的に取り入れてみてください。

趣味の話や、ちょっとした外出の計画。療養中心の日常から少し離れる時間が、本人にとっても家族にとっても気持ちの余裕を生みます。

各種手続き

手続きの負担が大きいと感じたら、障害福祉課の窓口やソーシャルワーカーを頼ってかまいません。制度の申請は、本人でなくても家族が代行できるものがほとんどです。

一人で、あるいは家族だけで抱え込まないこと。それが、透析と長くつき合っていくうえで最も大切な考え方ではないかと思います。