介護サービスは何ができる?できること・できないことを整理

介護サービスは何ができる?できること・できないことを整理

親の介護が必要になったとき、多くの方が最初にぶつかる壁があります。「介護サービスでは、いったい何をしてもらえるのか」という疑問です。

介護保険による訪問介護には、「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つの区分があり、それぞれ受けられる内容と受けられない内容が明確に決まっています。

厚生労働省が定めた通知が、訪問介護員(ホームヘルパー)の業務範囲の基本的な指針となっており、ケアプランに沿った内容だけが給付の対象です。

この記事では、介護サービスで「できること」と「できないこと」を種類別に整理し、介護保険の対象外になるケースや、医療行為との境界線までわかりやすく解説しています。これから介護サービスの利用を検討する方が、制度を正しく理解したうえでケアマネジャーに相談できるよう、具体例を交えてまとめました。

目次

介護サービスでできることを種類別に整理

訪問介護のサービスは、大きく以下の3つに分かれます。

3つの訪問介護サービス
  • 身体介護
  • 生活援助
  • 通院等乗降介助

訪問介護は利用者が自宅で自立した日常生活を送れるよう、ホームヘルパーが居宅を訪問して各種の介護や生活支援を行うサービスとされています。

令和6年4月審査分 訪問介護受給者のサービス利用傾向

要介護認定一番利用の多い訪問介護サービス
要介護1生活援助利用:52.0%
要介護5身体介護:92.0%
参照元:厚生労働省|令和5年度 介護給付費等実態統計の概況

つまり、介護度が上がるにつれて身体介護の必要性が高まり、軽度の方は生活援助を中心に利用する傾向が見て取れます。それぞれの区分で、どのような内容が介護保険の対象になるのか。以下で具体的に見ていきましょう。

身体介護で受けられる支援の具体例

身体介護とは

利用者の身体に直接触れて行う介助を指します。

厚生労働省 通知の身体介護のサービス行為

  • 排せつ介助
  • 食事介助
  • 入浴介助
  • 清拭(せいしき)
  • 身体整容
  • 体位変換
  • 移乗・移動介助
  • 起床・就寝介助
  • 服薬介助
  • 自立支援のための見守り的援助 など

参照元:厚生労働省|訪問介護

もう少し具体的に見てみましょう。

身体介護のサービス行為の具体例
排せつ介助

トイレへの誘導、おむつ交換、ポータブルトイレの利用の手助け

食事介助

食べ物を口に運ぶ介助、水分補給の声かけと見守り

入浴介助

浴室への移動、洗髪・洗体の手助け、浴槽の出入り介助

更衣介助

衣服の着脱を手助けし、身だしなみを整える

移乗・移動介助

ベッドから車いすへの移乗、室内での歩行の付き添い

見守り的援助

利用者と一緒に掃除や調理を行い、自立を促す

平成30年度の改正では、「見守り的援助」に該当する行為の例が8種類追加され、計15種類に拡大しました。洗濯物を一緒に干す・たたむ、冷蔵庫の中を一緒に整理するといった行為も、自立支援の観点から身体介護に含まれるようになっています。

一方で、散髪やマッサージなど、日常生活の介護に該当しない行為は身体介護の対象外です。また、利用者本人の車やヘルパー個人の車で病院に送迎する行為も認められていません。

「何でもお願いできる」わけではなく、あくまでケアプランに基づいた日常生活の介助が身体介護の範囲となります。

生活援助で頼める家事支援の具体例

生活援助とは

身体介護以外の訪問介護で、掃除・洗濯・調理など日常の家事を支援するサービスです。利用者が一人暮らしの場合や、同居家族に障害・疾病があり家事が困難な場合に提供されます。

生活援助のサービス具体例
掃除

居室や台所、トイレ、浴室など、利用者が日常的に使う場所の清掃、ごみ出し

洗濯

衣類の洗濯、干す作業、取り込み、たたんで収納

調理

利用者本人の食事の準備、配膳、片づけ

買い物

日用品や食料品の買い出し(生活に必要なものに限る)

薬の受け取り

処方薬の受け取り

衣類の整理・補修

ボタン付けや衣類のほつれ直し

ここで覚えておきたい点が一つあります。生活援助はあくまで「利用者本人の日常生活維持」が目的なので、たとえば窓のガラス磨き、庭木の手入れ、大がかりな掃除、おせち料理などの特別な行事食の調理は対象外です。お酒やたばこなどの嗜好品の買い物もできません。

また、同居する家族が健康で家事を行える状態であれば、原則として生活援助は利用できない決まりになっています。ただし、家族が仕事で日中不在の場合や、高齢で家事が難しい場合など、状況によっては利用が認められるケースもあります。

自治体によって判断基準が異なることもあるため、具体的にはケアマネジャーに確認してみてください。

通院時の乗降介助で受けられる支援の範囲

通院等乗降介助とは

訪問介護事業所のヘルパーが自ら運転する車両に利用者を乗せ、通院などの移動を支援するサービスです。要介護1から5の認定を受けた方が対象で、ケアプランに通院等乗降介助の必要性が位置づけられていることが利用の条件になります。要支援1・2の方はこのサービスを利用できません。

通院等乗降介助で受けられる範囲
  • 自宅から車両への乗車の介助
  • 車両からの降車の介助
  • 乗車前・降車後の屋内外での移動介助
  • 通院先での受診手続きの手助け

ここで注意したいのが、病院内での付き添いについてです。院内での移動介助や待ち時間の付き添いは、原則として病院スタッフが対応するものとされています。

ただし、病院側で対応が難しく、ケアマネジャーがケアプランに必要性を明記した場合には、例外的に介護保険の算定対象となることもあります。たとえば、複数の診療科を受診するための院内移動や、トイレでの排せつ介助が必要なケースがこれに該当します。

2021年4月の介護保険制度改定では、通院等乗降介助のルールが一部緩和されました。従来は自宅を出発地または到着地とする移動のみが対象でしたが、改定後は病院から病院への移動についても算定対象に含まれるようになっています。

なお、移送にかかる運賃(タクシー代に相当する費用)は介護給付の対象外で、利用者の自己負担です。介護保険でカバーされるのは、あくまで乗り降りやその前後の介助部分のみとなります。

介護サービスではできないことの一覧

介護保険の訪問介護は「利用者本人の自立した日常生活を支援する」ことが目的のため、その範囲を超える行為はサービスの対象外です。

厚生労働省が例示する訪問介護で受けられないサービス
  • 利用者の家族のための家事や来客の対応
  • 草むしり
  • ペットの世話
  • 大掃除
  • 窓のガラス磨き
  • 正月の準備など

「どこまでやってもらえるのか」が曖昧なまま利用を始めると、思わぬトラブルにつながることもあります。できないことを事前に知っておくことで、必要に応じて介護保険外のサービスやご家族の役割分担を検討する材料にもなるでしょう。以下、代表的な「できないこと」を3つの観点から整理します。

本人以外の家族への援助は対象外になる

訪問介護のサービスは、利用者本人の生活を支えることだけを目的としています。そのため、家族のための家事や身の回りの世話は、たとえヘルパーが在宅中であっても行えません。

訪問介護サービス対象外の例
  • 家族分の食事の調理や洗濯
  • 利用者が使っていない家族の居室の掃除
  • 来客へのお茶出しや接客
  • 利用者以外の家族のための買い物

より詳細な具体的例

  • 利用者と同居するお孫さんの分まで夕食を作ってほしいと頼まれても、ヘルパーは応じることができません。
  • 利用者本人と家族が共用するトイレや浴室の掃除については、「家族が特別な事情で清掃できず、かつ利用者の生活維持に必要な場合」にはケアマネジャーを中心としたサービス担当者会議で検討のうえ、対応できる可能性があります

こうした線引きは家事代行サービスとの違いを理解するうえでも大切なポイントです。介護保険は限られた財源で運営されている公的制度であり、「必要な人に必要な支援を届ける」という原則があるためです。

もし家族の分の家事も依頼したい場合は、介護保険外の自費サービス(家事代行など)を併用する方法があります。

日常の範囲を超えた家事や趣味の支援は含まれない

訪問介護の生活援助は、日常的に繰り返し行う家事が対象です。そのため、日常生活の維持には直接関係しない行為は給付の対象になりません。

生活援助対象外となる行為の例
  • 大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ
  • 庭の草むしりや植木の剪定
  • ペットの散歩やえさやり
  • 年賀状の作成や正月・行事の準備
  • おせち料理など特別な調理
  • 家具の移動や模様替え、引っ越しの手伝い
  • 趣味のための外出の付き添い(お花見、買い物、老人会など)

趣味や散歩のための外出介助もできません。「もう少しだけ」と感じることもあるかもしれませんが、介護保険制度は利用者の自立支援と重度化防止を理念としており、「なくても日常生活に支障がない」と判断される行為は対象外とされています。

なお、自治体によっては窓ふきや電球交換なども、利用者の状況に応じて認められるケースがあります。制度上の基本的な考え方に含まれていない内容であっても、状況に応じて柔軟に判断されることがあるため、一律に利用できないとは限りません。判断に迷う場合はケアマネジャーを通じて市区町村に確認するのが確実です。

どうしても日常の範囲を超えた家事の支援が必要な場合は、介護保険外の有償サービスをスポットで利用するという選択肢もあります。夏場の庭仕事や年末の大掃除などを依頼し、介護保険サービスと組み合わせることで、心身の負担を減らしながら在宅生活を続けることが可能になります。

医療行為とそうでないケアの境界線

介護現場で特に判断が難しいのが、医療行為に該当するかどうかという問題です。医師法第17条は「医師でなければ医業をなしてはならない」と定めており、ヘルパーが医療行為を行うことは法律で禁じられています。

一方、厚生労働省は2005年(平成17年)の通知で、介護現場でよく行われる行為のうち「原則として医行為ではない行為」を明示しました。さらに2022年(令和4年)と2025年(令和7年)にもガイドラインが更新され、介護職員が行える行為の範囲がより明確になっています。

参照元:厚生労働省|生活保護・福祉一般|原則として医行為ではない行為について

ヘルパーが行える「医行為ではない行為」の例
体温計・自動血圧計・パルスオキシメータでの測定

軽微な切り傷・やけどの処置(専門的な判断が不要な場合)

正常な状態の爪を爪切りで切る、やすりをかける

医師の処方に基づく内服薬の服薬介助(一包化されたものの手渡し・飲み忘れの声かけなど)

湿布の貼付、目薬の点眼、座薬の挿入(容態が安定している場合)

軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)

インスリン注射の声かけ・見守り・使用済み注射器の片づけ(注射そのものは本人が行う)

ストーマ装具のパウチにたまった排せつ物の廃棄
ヘルパーが行えない医療行為の例
注射、点滴の実施

褥瘡(じょくそう・床ずれ)の処置

摘便(直腸内の便を指で取り除く行為)

薬の種類や量の変更・調整

血糖値の判断に基づくインスリン注射量の決定
一定の研修を修了し認定を受けた介護職員に限り、行うことが認められている行為
喀痰吸引(かくたんきゅういん)
経管栄養
ただし、これらは医師の指示のもとで実施する必要があり、すべてのヘルパーが対応できるわけではありません。

医療行為かどうかの判断は利用者の状態によっても変わるため、迷ったときはケアマネジャーやかかりつけ医に相談することが大切です。

訪問介護・通所介護・施設介護で対応範囲が異なる

先述いている介護保険で受けられる3つのサービス「訪問介護」「通所介護」「施設介護」は、それぞれ利用する場所も、受けられる内容も異なるため、どのサービスが親の状態に合っているのか迷う方は少なくありません。

たとえば、自宅での掃除や調理を手伝ってほしい場合と、日中だけ施設で過ごしたい場合では、選ぶべきサービスがまったく違います。厚生労働省は、居宅サービス・地域密着型サービス・施設サービスなど多岐にわたるサービス区分を示しており、各サービスの役割は明確に分かれています。

では、それぞれのサービスで「何ができて、何ができないのか」を具体的に見ていきましょう。

訪問介護はケアプランに沿った在宅支援が中心

訪問介護とは、ホームヘルパー(訪問介護員)が利用者の自宅を訪問し、日常生活を手助けするサービスです。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、以下の2つに大別されています。

訪問介護サービスの大別
身体介護

食事・排泄・入浴など

生活援助

掃除・洗濯・買い物・調理など

ここで押さえておきたいのが、訪問介護はケアマネジャーが作成したケアプランの範囲内でしか対応できないという点です。利用者本人への援助に限られるため、家族の食事づくりや来客対応、ペットの世話などは引き受けてもらえません。

また、生活援助には介護度ごとに1か月の利用回数に上限が設けられています。厚生労働省が定める基準回数を超える場合は、ケアマネジャーが市町村に届け出を行い、必要性を認められなければなりません。

身体介護でできる内容の例
  • 食事の介助
  • 服薬の見守り
  • 入浴や清拭(体を拭くこと)の介助
  • 排泄の介助
  • おむつ交換
  • 衣服の着替えの手伝い
  • 通院時の乗車・降車の介助

一方、「日常生活の援助を超える行為」は対象外です。窓ガラスの掃除、庭の草むしり、大掃除、正月の準備なども訪問介護では対応してもらえません。

つまり、訪問介護は「利用者本人の自立した生活を維持する」ことが目的であり、何でも頼めるサービスではないのです。「ここまでやってもらえると思っていた」というギャップが生まれやすい部分でもあるので、事前にケアマネジャーと細かく確認しておくことが大切でしょう。

通所介護と施設介護で受けられる生活支援の違い

通所介護(デイサービス)とは

利用者が日帰りで施設に通い、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどを受けるサービスです。送迎車による自宅と施設間の送り迎えがあり、朝から夕方まで施設内で過ごします。

厚生労働省の資料によると、通所介護では「入浴・排せつ・食事等の介護、生活等に関する相談及び助言、健康状態の確認、機能訓練」が含まれるとされています。

通所介護の特徴は、自宅にこもりがちな高齢者に外出の機会をつくれる点にあります。他の利用者やスタッフとの交流を通じて、心身の機能維持を図れるのが大きな利点です。また、利用者が施設にいる間、家族が介護から離れて自分の時間をつくれる「レスパイト(介護者の休息)」の役割も担っています。

ただし、通所介護で対応できるのは施設内でのケアに限られます。利用者の自宅に出向いての掃除や調理といった生活援助は行いません。あくまで「通って受けるサービス」であることを理解しておく必要があります。

施設介護とは

特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの入所型施設で24時間体制の介護を受けるサービスです。食事介助、入浴介助、排泄介助などの身体介護が中心で、夜間の巡回・見守りやコール対応も含まれます。

入所型の施設では要介護度が高い方の利用が多く、訪問介護と比べて身体介護の割合が高い傾向にあります。

通所介護と施設介護の主な違い

通所介護施設介護
利用形態日帰り入所して生活
対応時間日中のみ24時間
生活援助施設内のケアのみ生活全般を施設内でカバー
機能訓練レクリエーションや体操が充実リハビリ対応の施設もある

どのサービスを選ぶかは、利用者本人の身体状態や家族の介護力、生活環境によって異なります。「在宅で暮らし続けたい」のか、「専門スタッフに常時見てもらいたい」のかで、選ぶ方向性は大きく変わってきます。迷ったときは、担当のケアマネジャーに率直に状況を伝え、一緒に考えてもらうのがよいでしょう。

できないことを頼みたいときの対処法

介護保険サービスには、制度上対応できない内容がどうしても出てきます。庭の草むしり、ペットの世話、家族の食事づくり、遠方への外出の付き添いなど、「日常生活の援助の範囲を超える」と判断されるものは、ケアプランに組み込むことができません。

では、こうした「保険ではカバーできない困りごと」にはどう対処すればいいのでしょうか。実は、介護保険の外にも利用できる手段がいくつか用意されています。自費サービスの活用、自治体独自の高齢者向け事業への相談、そしてケアマネジャーとのケアプラン見直しです。

それぞれの方法を、順を追って見ていきましょう。

介護保険外の自費サービスを活用する方法

介護保険外の自費サービスとは介護保険制度の枠にとらわれず、利用者が全額自己負担で受けられるサービスの総称です。要介護認定の有無に関係なく利用でき、サービスの内容や時間に制限がない点が特徴といえます。

自費サービスで利用できること
  • 家族の分も含めた食事の調理
  • 庭の手入れや草むしり
  • ペットの散歩や餌やり
  • 趣味の外出(映画鑑賞、買い物など)への付き添い
  • 冠婚葬祭の付き添い
  • 大掃除や窓拭き

自費サービスの提供元とその特徴

提供元サービスの特徴費用の目安
訪問介護事業所
(保険外サービス)
介護保険サービスとは別メニューとして提供1時間あたり 3,000~5,000円程度
シルバー人材センター高齢者の就業支援として地域の生活支援を提供訪問介護より低価格なケースあり
社会福祉協議会地域住民向けの生活支援サービスとして実施訪問介護より低価格な場合が多い
民間の家事代行会社会社ごとに異なる会社ごとに異なる
自費サービスの利用について
混合介護介護保険サービスと保険外サービスを同時に受けることは原則不可
※一部自治体(例:東京都豊島区)では混合介護のルールを試験的に整備
可能な利用方法介護保険サービスの前後に保険外サービスを続けて利用する形なら可能
利用方法担当ケアマネジャーに相談
※介護認定を受けていない場合は、地域包括支援センターに問い合わせ

参照元:東京都福祉局|高齢者|介護保険|選択的介護モデル事業

自治体の高齢者向け支援事業に相談する方法

市区町村は、介護保険とは別に独自の高齢者向けサービスを実施しています。自治体ごとに内容は異なりますが、生活に密着した実用的なメニューが数多く用意されています。

こうした自治体独自のサービスは、介護保険のサービスと比べて以下のように費用が安く設定されていることが多い点が魅力です。

自治体独自の高齢者向けサービス費用の例
サービス内容費用の目安
配食サービス1食500~700円程度
紙おむつの助成自治体により異なる
出張理美容助成により数百円で利用できる地域あり
緊急通報装置の貸与自治体により異なる
タクシー券の交付自治体により異なる

ただし、利用できる対象者の条件が細かく決まっている場合もあります。「65歳以上の一人暮らし」「要介護認定を受けている」など、自治体ごとに基準が異なるため、住んでいる地域の窓口で確認する必要があります。

相談先として覚えておきたいのが「地域包括支援センター」です。各市区町村に設置されている高齢者のための総合相談窓口で、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されています。厚生労働省の資料によると、全国に5,000か所以上あり、中学校区域程度の範囲を1つのセンターが担当しています。

地域包括支援センターで相談できること
介護保険の申請手続き介護保険の利用に関する手続きの相談
保険外サービスの紹介自治体サービスなど保険外支援の紹介
福祉用具の利用方法の助言福祉用具の使い方などのアドバイス
認知症に関する相談認知症についての相談対応
高齢者の権利を守る支援高齢者の権利を守るための支援

利用料は無料で、相談内容の秘密も守られます。

自治体によって「高齢者あんしんセンター」「おとしより相談センター」「高齢サポート」など、名称が異なる場合がある点には注意してください。わからないときは、市区町村の介護保険課や福祉課に電話すれば、担当のセンターを教えてもらえます。

離れて暮らす親の相談をしたい場合は、家族が住んでいる場所ではなく、親が住んでいる地域の地域包括支援センターに問い合わせるのがポイントです。

ケアマネジャーとの見直しで支援の幅を広げるには

「今のケアプランで足りない」「もう少し違うサービスを使いたい」と感じたら、まず担当のケアマネジャーに率直に伝えてみてください。ケアプランは一度つくったら終わりではなく、利用者の状態変化や生活環境の変化に応じて見直すことが前提のものです。

厚生労働省の基準では、ケアマネジャーは月に1回以上利用者宅を訪問し、ケアプランに基づくサービスが適切に提供されているかどうかを確認する「モニタリング」を行います。この機会に、困っていることや希望するサービスを伝えれば、ケアプランの変更につなげてもらえる可能性があります。

ケアプラン見直しのおおまかな流れ
  • 利用者や家族がケアマネジャーに現状の困りごとを伝える
  • ケアマネジャーが改めて利用者の状態を評価する(アセスメント)
  • 必要に応じてサービス担当者会議を開く
  • ケアプランの原案を修正し、利用者と家族の同意を得る
  • 新しいケアプランに沿ったサービスが始まる
要介護度の変更(区分変更)

要介護度の変更(区分変更)を申請する方法もあります。身体の状態が悪化して、今の要介護度では必要なサービスが受けられなくなった場合、ケアマネジャーを通じて区分変更の申請が可能です。認定が変われば、利用できるサービスの種類や上限額も変わります。

通所介護や短期入所(ショートステイ)との併用

訪問介護だけでは対応しきれない場合に、通所介護や短期入所(ショートステイ)を組み合わせるケースもあります。たとえば、家族が仕事で日中不在の場合にはデイサービスを利用し、家族の旅行や体調不良時にはショートステイを活用する、というように複数のサービスを組み合わせることで、在宅生活を続けやすくなることがあります。

ケアマネジャーとの相性が合わないと感じるときは、同じ事業所内での担当変更や、別の居宅介護支援事業所への変更もできます。変更に特別な理由は不要で、費用もかかりません。地域包括支援センターに相談すれば、地域で活動しているケアマネジャーの情報を教えてもらえます。

遠慮して我慢し続けるよりも、「今、何に困っているのか」を言葉にしてみること。それが、親に合った介護の形を見つける一歩になります。

介護サービスを利用するまでの流れと手続き

介護保険サービスを利用するには、いくつかの手続きを順番に進めていく必要があります。「どこに相談すればいいのか」「何をすればサービスが始まるのか」が分からず不安を感じるご家族も多いですが、手順そのものはそれほど複雑ではありません。

ここでは、要介護認定の申請からサービス開始までの一連の流れを、段階ごとに整理して解説します。

要介護認定の申請から結果通知までの手順

「要介護認定(要支援認定を含む)」の申請

介護保険サービスを利用するためには、まずお住まいの市区町村の窓口で「要介護認定(要支援認定を含む)」の申請を行います。申請には介護保険被保険者証が必要です。

40〜64歳の第2号被保険者の場合は、医療保険証も併せて持参してください。なお、本人が窓口に行けない場合は、家族や地域包括支援センターなどが代行して申請することもできます。

「認定調査」の実施

申請後は、市区町村の調査員が自宅や入院先を訪問し、心身の状態を確認するための「認定調査」を実施します。調査では、歩行や入浴、食事といった日常動作の状況や認知機能について、全国共通の項目に沿って聞き取りが行われます。

この認定調査と並行して、市区町村からの依頼により、かかりつけ医が「主治医意見書」を作成します。主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受ける必要があります。

判定(一次・二次)

認定調査の結果と主治医意見書の一部をもとに、コンピュータによる一次判定が行われます。これは厚生労働省が作成した全国共通のソフトを用い、介護にかかる時間の目安(要介護認定等基準時間)を算出する仕組みです。

続いて、保健・医療・福祉の学識経験者で構成される「介護認定審査会」で二次判定が行われ、最終的な要介護度が決定されます。

認定結果

認定結果は、申請から原則30日以内に通知されます。判定区分は「非該当」「要支援1〜2」「要介護1〜5」の8段階で、認定された区分に応じて利用できるサービスの種類や量が変わります。

なお、認定には有効期間があり、期間満了前に更新申請を行う必要があります。身体の状態に変化が生じた場合は、有効期間の途中であっても「区分変更申請」が可能です。

ケアプラン作成からサービス開始までの手順

ケアプラン(介護サービス計画書)の作成

要介護認定の結果が出たら、次に行うのがケアプラン(介護サービス計画書)の作成です。

ケアプランとは、「どのような介護サービスを、いつ、どのくらいの頻度で利用するか」を具体的にまとめた計画書のことです。介護保険サービスを利用するにはこのケアプランが欠かせません。

ケアプランの作成依頼

ケアプランの作成先は、認定区分によって異なります。要介護1〜5と認定された方は「居宅介護支援事業所」のケアマネジャー(介護支援専門員)に、要支援1〜2と認定された方は「地域包括支援センター」にそれぞれ依頼します。

施設への入所を希望する場合は、施設の介護支援専門員がケアプランを作成します。なお、ケアプランの作成費用は全額が介護保険から給付されるため、利用者の自己負担はありません。

ケアプラン作成(アセスメント・原案作成・内容検討)

ケアプラン作成の流れは、大きく分けて次のように進みます。まず、ケアマネジャーが利用者の自宅を訪問して、本人や家族から体調・希望・生活上の困りごとなどを聞き取ります(アセスメント)。その情報をもとにケアプランの原案を作成し、関係するサービス事業者などを交えた「サービス担当者会議」で内容を検討します。

利用者・家族が計画に同意し署名すれば、各事業者との契約を経てサービスの利用開始となります。

サービス開始

サービスが始まった後も、ケアマネジャーは最低でも月に1回以上のモニタリングを行い、ケアプランに沿ったサービスが適切に提供されているかを確認します。利用者の状態や環境に変化があれば、おおよそ6か月に1度を目安にケアプランの見直し・修正が行われます。

介護で家族が事前に確認しておくべきこと

介護サービスの利用手続きを理解したうえで、家族として事前に把握しておきたいのが「費用」と「役割分担」です。

介護保険制度は非常に手厚い仕組みですが、利用できるサービスには上限があり、すべてが保険でまかなわれるわけではありません。また、介護サービスだけでは対応しきれない部分を家族がどう補うかも、長期的な介護生活を支えるうえで重要な視点です。

介護サービスの利用上限と自己負担の仕組み

介護保険の在宅サービスには、要介護度ごとに1か月あたりの利用限度額(区分支給限度基準額)が設けられています。この限度額の範囲内であれば、サービス利用料の自己負担は原則1割です。一定以上の所得がある方は2割、さらに高所得の方は3割の負担となります。

各区分の支給限度基準額は次のとおりです。

認定区分支給限度額(月額)自己負担額の目安(1割の場合)
要支援150,320円約5,032円
要支援2105,310円約10,531円
要介護1167,650円約16,765円
要介護2197,050円約19,705円
要介護3270,480円約27,048円
要介護4309,380円約30,938円
要介護5362,170円約36,217円
自己負担の注意点
限度額を超過した場合

ここで注意したいのは、限度額を超えてサービスを利用した場合です。超過分は全額自己負担となるため、月々の利用計画はケアマネジャーとよく相談して立てることが大切です。なお、特定福祉用具の購入費(年間10万円が限度)や住宅改修費(20万円が限度)は、この支給限度基準額とは別枠で介護保険の給付を受けられます。

自己負担額が高額になった場合

また、自己負担額が高額になった場合には「高額介護サービス費」という制度があります。月々の自己負担額(食費・居住費等を除く)の合計が所得に応じた上限額を超えた場合、超過分が介護保険から払い戻されます。支給を受けるには市区町村への申請が必要ですので、月々の負担が重いと感じた場合は忘れずに確認しましょう。

自己負担の割合(1割・2割・3割)は、65歳以上の第1号被保険者の場合、本人の所得等に応じて判定されます。実際の負担割合は「介護保険負担割合証」に記載されていますので、手元に届いたら内容を確認しておきましょう。

参照元:厚生労働省|介護サービス情報 公表システム|介護保険の解説|サービスにかかる利用料厚生労働省|福祉用具・住宅改修

家族が担う役割と介護サービスの使い分け

介護保険サービスを利用していても、すべてをサービスに任せられるわけではありません。介護保険で対応できるのは、あくまで制度の枠組みで定められた範囲のサービスです。

たとえば、訪問介護(ホームヘルプサービス)では利用者本人への直接的な身体介護や生活援助は対象になりますが、家族の分の食事の準備や来客の対応、ペットの世話といった「本人以外のための家事」は対象外です。

家族の役割

そのため、介護生活をうまく回していくには、介護保険サービスと家族の役割をあらかじめ整理しておくことが重要です。

家族が担う場面として多いのは、通院の付き添いや薬の管理、入退院時の手続き、日々の見守りや声かけ、ケアマネジャーとの連絡調整などです。特に離れて暮らしている家族の場合は、定期的な連絡や緊急時の対応体制をどうするか、あらかじめ話し合っておくと安心です。

家族が抱え込まない介護

ケアプランの作成時には、家族がどの程度介護に関われるかをケアマネジャーに率直に伝えてください。「仕事があるので平日の日中は対応が難しい」「週末だけなら手伝える」など、具体的に伝えることで、現実に即したプランを組み立てやすくなります。

無理をして家族だけで抱え込むと、介護する側の体調不良や精神的な疲弊(いわゆる「介護疲れ」)につながりかねません。

介護が長期にわたる場合は、デイサービスやショートステイなど、家族の負担を軽減するためのサービスも積極的に活用しましょう。

「介護サービスに頼ることは後ろめたい」と感じる方もいますが、制度は家族の生活を守るためにも設計されています。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すれば、家族の状況に合わせたサービスの使い分けを一緒に考えてもらえます。