「親の介護と仕事は両立できるの?」
「もう辞めるしかないのかな…」
そう悩んで検索していませんか。親の体調が変わり始めたとき、仕事を続けながら介護にどう向き合うかは切実な課題となります。
総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、介護や看護を理由に離職した人は年間約10万6,000人にのぼり、その約8割が女性です。
ただし、すぐに仕事を辞める必要はありません。実は、介護休業や介護休暇といった法律上の制度、自治体や地域包括支援センターの支援を活用すれば、仕事を続けながら親の介護をすることは可能です。
この記事では、以下を公的データにもとづいて整理し、わかりやすく解説します。
- 親の介護と仕事の両立の具体的な方法
- 使える制度
- 施設を検討するタイミング
- どうしても限界なときの判断基準
親の介護と仕事を両立する5つの方法
親の介護が必要になると「自分が仕事を辞めて付きそうしかない」と考えてしまいがちですが、情報を集める前に退職することで、経済面や精神面の状況がかえって悪化したという報告が多く見られます。
厚生労働省も「仕事と介護を両立する準備を進めておきましょう」と発信しており、まずは落ち着いて使える制度や相談先を把握することが出発点になるでしょう。
ここからは、親の介護と仕事を両立するための5つの方法を解説します。
①退職せずにまずやるべきこと
まず退職をしないことを前提に、次いでやるべきことが「退職後のリスクを考える」ことと、「将来を見越した情報の収集」です。
厚生労働省の委託調査「令和3年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」によると、介護離職に至った人のうち6割以上が「介護休業制度を利用したかった」と回答しています。
- 勤務先に制度が整備されていなかった
- 制度の存在を知らなかった
上記の理由から制度を知らないまま退職を選んだ人が相当数いるということがわかります。
今までは介護者が会社と介護の板挟みになりながら辛い思いを抱えてしまう傾向も見聞きしましたが、今は会社の人事部門とも相談ができる時代になりつつあるのです。
退職を考える前に会社と地域包括支援センターへの相談を並行して進めると、状況も整理しやすくなるでしょう。
「親の介護」という大きなハードルを目の前にし、感情が揺れている時期に退職という大きな決断をすべきではないのです。
介護離職は収入や再就職のリスクがある
介護離職は精神的な解放感をもたらす面がある一方、経済的な打撃が大きい点は見過ごせません。厚生労働省の調査では、介護離職した人のうち経済面で「負担が増した」と感じた割合が約7割に達しています。
収入が途絶えることで利用できる介護サービスを減らさざるを得なくなり、介護そのものの負担が重くなるという悪循環に陥りやすくなるためです。
再就職の面でもハードルは高くなります。「手助・介護」を機に仕事を辞めてから、再就職をしても多くの方が正規雇用ではなく非正規雇用となることが調査結果に出ています。離職期間が長引くほど非正規雇用に転じやすくなるおそれもあるのです。
50代での離職は求人の選択肢が限られ、キャリアの中断が長期化しやすい点も押さえておきましょう。
退職は最終手段として残しておくのが賢明です。
親の介護方針と資産状況は早めに確認する
介護が本格化してからでは、親本人の希望を聞き出すのが難しくなることがあります。認知機能の低下や入院をきっかけに意思疎通が難しくなるケースも多いため、親が元気なうちに将来的に必要な希望や情報を確認しておくのが望ましいでしょう。
- 在宅介護を望むか施設入居を考えているか
- かかりつけ医はどこか
- 介護費用にあてられる資産はどの程度あるか、など
介護保険制度の自己負担割合は原則1割ですが、一定以上の所得がある場合は2割または3割に引き上げられます。親の年金額や預貯金、不動産の状況を把握しておくと、どの介護サービスを利用できるか見通しが立てやすくなるはずです。
兄弟がいる場合は、介護の役割分担や費用負担についても早めに話し合っておくと将来的なトラブルの予防につながります。親の介護方針と家族の状況を「見える化」すること――これが、仕事と介護を無理なく両立させるための土台となるでしょう。
② 親の介護に使える会社の制度を確認
親の介護と仕事の両立には福祉制度の利用が欠かせません。育児・介護休業法には、介護と仕事の両立を支えるための制度が複数用意されています。代表的なものは、雇用保険法下の「介護休業給付金」を含めた以下4つの制度です。
| 制度名 | 対象 | 取得・利用期間 | 内容・ポイント |
|---|---|---|---|
| 介護休業 | 要介護状態の家族を介護する労働者 | 対象家族1人につき通算93日まで(3回まで分割可) | まとまった期間休業できる制度。法律上、事業主は原則拒否できない。 |
| 介護休暇 | 要介護状態の家族を介護する労働者 | 年5日(対象家族2人以上は年10日) | 1日単位・時間単位で取得可能。通院付き添いなど短期的な対応向け。 |
| 時短勤務・残業免除 | 要介護状態の家族を介護する労働者 | 利用開始から3年以上の間で2回以上利用可能(※制度ごとに条件あり) | ①短時間勤務制度②所定外労働の制限(残業免除)など。仕事と介護の両立支援制度。 |
| 介護休業給付金 ※雇用保険法 | 介護休業を取得し、雇用保険加入要件を満たす人 | 介護休業期間中 | 休業前賃金の67%を支給。対象家族1人につき最大93日分。 |
それぞれ対象者や取得日数、申請方法が異なるため、自分の状況に合った制度を選んで使い分けることが大切です。制度の存在を知っているだけで、急な対応を迫られた場面でも冷静に判断しやすくなるでしょう。
介護休業は通算93日まで分割して取得できる
要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割取得できる制度です。
対象家族は配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫と幅広く定められています。
93日という期間は、介護のすべてを自分で担うためのものではありません。厚生労働省はこの介護休業を「仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間」と位置づけており、ケアマネジャーとの打ち合わせや介護サービスの契約、施設入居の検討などにあてることも想定されています。
申請は休業開始予定日の2週間前までに書面で事業主へ届け出る流れになります。有期雇用の方でも93日経過後6か月以内に契約が終了しない見込みであれば対象です。
介護休暇は年5日まで時間単位でも申請できる
要介護状態にある対象家族の介護や世話のために取得できる短期の休暇制度です。
対象家族1人につき年5日まで、2人以上なら年10日まで利用でき、年次有給休暇とは別に取得できるのが特徴です。
2021年1月の法改正により、1日単位だけでなく時間単位でも取得可能になりました。通院の付き添いで午前中だけ休む、ケアマネジャーとの打ち合わせに2時間抜けるといった柔軟な使い方ができます。なお、所定労働時間が7時間30分の場合は8時間分で1日とカウントされる点に注意しておきましょう。
申請方法は介護休業と異なり、当日の口頭申し出でも認められます。有給か無給かは会社の就業規則次第のため、事前に人事担当者へ確認しておくと安心。
時短勤務や残業免除で働く時間を調整する方法
介護休業や介護休暇だけでなく、日常の勤務時間を調整できる制度も整備されています。
育児・介護休業法は事業主に対し「所定労働時間の短縮措置等」を義務づけており、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ(時差出勤)、介護サービス利用費の助成――このいずれかを講じなければなりません。
主に育児・介護休業法に基づき、3歳未満の子を養育する従業員や、介護を行う従業員が、離職せずに働き続けられるよう、企業が1日の所定労働時間を短縮する(短時間勤務)などの措置を講じる制度です。
介護休業とは別枠で、対象家族1人につき、利用開始から3年以上の期間で2回以上使えます。
介護休業給付金で休業中の収入を補う仕組み
介護休業中は多くの企業で給与が支払われません。その収入減を補う制度が、雇用保険から支給される「介護休業給付金」です。
雇用保険の被保険者が、要介護状態にある家族を介護するために介護休業を取得した場合に、休業前の賃金の約67%が支給される制度です。
介護離職を防ぎ、仕事と介護の両立を支援するための経済的援助を目的としています。
支給額は「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」で計算され、対象家族1人につき通算93日分、3回まで分割で受け取れます。
厚生労働省が示す目安によれば、休業前の月給が平均20万円なら月額約13.4万円、30万円なら約20.1万円が支給されます。令和7年8月1日以降の上限額は月額356,574円です。
申請は原則として事業主を通じてハローワークに行い、介護休業終了(介護休業が3か月を経過したときは介護休業開始日から3か月経過した日)の翌日から2か月後の月末が期限となります。期限を過ぎると受給できなくなるため、休業終了後は速やかに手続きを進めましょう。
③介護保険サービスを使って日中の負担を減らす
日中の仕事中、誰が介護をすればいい?
少しでいいから休みたいけど、親を放っておけない…
親の介護に直面したとき、こんな悩みを持つ方は少なくありません。
実は、介護保険制度には日中の負担を軽くするためのさまざまなサービスが用意されており、厚生労働省の「介護保険事業状況報告(暫定)」2024年12月分によると、在宅で介護サービスまたは介護予防サービスを受けている人は約436万人にものぼります。
| 介護保険で利用できる主なサービス | 提供場所 | 内容 | 目的 | 利用の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 自宅 | ヘルパーが介助 | 日常生活の支援 | 自宅での生活動作に直接的な手助けが必要な場合 |
| デイサービス (通所介護) | 施設 | 食事・入浴・レクなど | 外出・交流・心身機能の維持 | 日中に一人きりになる時間が長く、外出や人との交流の機会をつくりたい場合 |
| ショートステイ (短期入所生活介護) | 施設 | 宿泊し、食事・入浴・排泄の介助や機能訓練 | 家族の負担軽減(レスパイトケア)と、利用者の心身機能の維持・向上 | 介護者が一時的に介護できない場合や、介護の負担を軽減(レスパイト)したい場合 |
多くの方が制度を利用しているにもかかわらず、「サービス内容や選び方がわからない」、「申請の仕方がわからない」という声が根強く残っているのが現状です。
訪問介護の特徴
「デイサービス(通所介護)」と並び、在宅介護者の日中の負担を減らす手段として代表的な介護保険サービスが「訪問介護」とです。
介護福祉士やホームヘルパー(訪問介護員)が要介護者や要支援者の自宅を直接訪問し、入浴・排泄・食事などの身体介護や、調理・洗濯・掃除などの生活援助を行う介護保険サービスです。
要介護1〜5の認定を受けている方が、原則として1~3割の事故負担で利用できます。
自宅から出ることが難しい方や、住み慣れた環境で過ごしたい方に向いています。 また、早朝や夜間の対応が可能な事業所もあり、仕事の時間帯に合わせた利用がしやすい点も特徴の一つです。
訪問介護は以下の通り、大きく「身体介護」と「生活援助」の2種類に分かれます。
| 身体介護と生活援助の違い | 内容 | 具体例 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 身体介護 | 利用者の身体に直接触れて行う介助 | 食事介助 入浴介助 排せつ介助 更衣介助 体位変換 移乗・移動介助など | 身体に直接関わる介助。見守りや声かけも、身体介護に付随する場合は含まれる。 |
| 生活援助 | 身体介護以外の日常生活の支援 | 調理 洗濯 掃除 買い物 薬の受け取りなど | 利用者本人の日常生活を支える家事支援。家族のための家事は対象外。 |
デイサービス(通所介護)
先述した訪問介護とは異なり、自宅から施設までの往復送迎の元、日中を施設内で過ごすサービスです。 厚生労働省の定義では、利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護負担の軽減を目的として実施されるとしています。
要介護・要支援認定を受けた高齢者が、日帰りで施設に通い、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどのサービスを受ける介護保険サービスです。
要介護1~5の方が通所介護として利用できる他、要支援1~2の方も介護予防通所介護として利用することができます。
利用時間は施設によって異なりますが、朝9時前後から夕方17時頃までのところが多く、仕事をしている家族にとっては「日中の空白時間」を埋めやすいサービスといえるでしょう。
デイサービスと混同されがちなサービスに「デイケア」がありますが、デイケアとデイサービスは目的や通所する方などが大きく異なります。
| デイケアとデイサービスの違い | 目的 | リハビリ | 医師の関与 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| デイサービス (通所介護) | 日中の見守り 生活支援 | 基本なし (簡単な体操程度) | なし | 家に閉じこもりがち・家族の負担軽減 |
| デイケア (通所リハビリテーション) | リハビリ中心 | 理学療法士などが実施 | あり (医師の指示が必要) | 退院後・身体機能を回復させたい方 |
ショートステイ(短期入所生活介護)
ショートステイ(短期入所生活介護)は、先述した「訪問介護」「デイサービス」とは異なる、介護者のレスパイトケアを目的とした介護サービスです。
要介護認定を受けた方が介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などに短期間宿泊し、食事・入浴・排泄の介助や機能訓練を受けられるサービスです。
連続利用日数の上限は30日までと定められています。
ショートステイの利用日数は、要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないことを運営基準としており、目安として認定有効期間が12か月(365日)の方であれば、おおむね半年分が利用可能日数です。ただし、本人や家族の状況によりやむを得ない事情がある場合は、この目安を超える利用も認められる場合があります。
- 家族の出張や冠婚葬祭で数日間自宅を空ける場合
- 介護者自身が体調を崩し、一時的に介護が難しくなった場合
- 精神的・身体的な疲労がたまり、まとまった休息が必要な場合
「自分が休む」ことに罪悪感を覚える方もいるかもしれませんが、介護する側が倒れてしまっては、在宅介護そのものが成り立たなくなります。
ショートステイ利用時の費用について
ショートステイの費用は要介護度と施設や部屋の種類によって変わり、介護保険の自己負担分に加えて、食費・滞在費・理美容代などが別途必要になります。
- 要介護度
-
要介護度が高いほど介護サービス費は高くなる傾向
- 施設の種類
-
併設型:他のサービス(デイなど)と同じ建物内にある
単独型:その施設のみで運営している - 部屋の種類
-
多床室:2~4人部屋で費用は比較的安い
個室:1人部屋でプライバシー重視
ユニット型:少人数のグループ生活型個室で、家庭的なつくり
上記の他、サービス提供体制強化加算や、職員の配置状況などによっても異なります。
低所得の方は「特定入所者介護サービス費(補足給付)」という制度で費用負担が軽減される場合があるため、市区町村の窓口で確認しておくとよいでしょう。
所得の低い方が介護保険施設(老人ホームなど)に入所する際、食費や居住費(滞在費)の負担が重くならないよう、行政がその差額を補う制度です。
介護保険サービスの費用相場
親の介護を考えるとき、「実際にいくらかかるのか」は誰もが気になるところでしょう。生命保険文化センターの2024年度調査結果によると費用平均は以下の通りです。
| 介護の一時費用 | 平均47.2万円 |
|---|---|
| 月々の費用 | 平均9.0万円 |
| 介護期間 | 平均55.0カ月(4年7カ月) |
| 総額 | 約542万円 |
介護費用には「一時費用」と「毎月の費用」の2種類があります。特に「毎月の費用」は介護サービスの利用中必ず発生する費用です。介護期間は人それぞれですが、約40%の方が4年以上、10年以上介護を続けているケースも14.8%あります。
介護が長期化すればするほど介護費用が膨らむため、まずは親の年金額や貯蓄残高を確認し、月々の収支を試算することから始めてみてください。
④兄弟姉妹で介護と費用の役割を分担する
親の介護は法律上、同居、別居、既婚、未婚に関わらず兄弟姉妹で平等な義務があります。しかし、現実ではうまく役割分担ができず負担が一部に偏ってしまうことも珍しくありません。
親の介護が必要になった時点で、兄弟姉妹との話し合いの場を設けましょう。「介護の全体像」を共有することから始め、その流れで役割分担まで進められることが理想です。
- ①中心人物
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介護方針を決めるキーパーソンとなる方を決め、他の兄弟はサポートすると効率的です。
- ②情報共有
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事前に決めた情報の進捗や介護状況を定期的に共有することで、一人に介護負担が偏ることを防げるだけでなく、後々介護の方針転換などを検討する際にもスムーズに進みます。
事前に決めておきたい事- 定期的な面会や帰省の頻度
- 緊急時の連絡手段と対応の優先順位
- 施設入所を検討する条件やタイミング
- ③役割分担
-
生活介助をする方や通院送迎、事務手続きなどの役割と交代頻度などを決めます。
物理的介護が難しい場合は他よりも多くの費用を負担するなど「自分にできること」で介護に参加しましょう。介護分担の主な役割- 日常的な生活介護担当
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食事、入浴などの生活介助
- 送迎・付き添い担当
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病院や施設への送迎、通院の付き添いなど
- 費用サポート担当
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遠方や多忙で直接介護が難しい場合などは、費用負担で協力する
- 事務・連絡調整担当
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施設やケアマネジャーとのやり取り、介護状況の共有など
- ④費用分担
-
原則は「介護費用は親自身のお金から出す」という考え方で、 親の年金や貯蓄を充て、不足した分を兄弟で補う流れを基本とします。不足分を補う際は、上記分担を元に金額を決めると良いでしょう。
介護の費用負担は、「お金」という目に見えるわかりやすい負担ですが、介護負担は金銭だけはありません。 日常的な介護では時間と体力の負担があります。
先にも触れていますが、「お金は出せないが週末は介護に参加する」「直接介護に参加できない代わりに月々の費用を多めに出す」など、各自の状況に合わせることが大切です。
話がまとまらないときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員に同席を依頼するのも有効です。 第三者が入ることで冷静な議論がしやすくなり、現実的な落としどころが見つかりやすくなります。
家族・親族間では、どうしても「言った・言っていない」、「聞いた・聞いてない」などの行き違いが発生しがちです。話し合った内容はメールやLINEなど記録が残る形で共有し、半年に1回程度は見直しの場を設けましょう。
⑤必要に応じて外部相談先を頼る
親の介護と仕事を両立するうえで、一番大切なことは「一人で何とかしようとしないこと」です。
兄弟姉妹がいない、親族が皆遠方で頼れないなどの環境にいる方はもちろん、家族複数人で介護をしていたとしても、介護が長期化すればするほど各自の消耗が進み、心身共に疲弊してくる時期もあるでしょう。
介護をするうえで頼れる先は、思っているより多くあります。
一人で抱え込まず、早い段階で外部相談先のプロを頼り、心身の健康を守ってください。
「地域包括支援センター」要介護認定の申請から家族の悩みまで幅広く対応
親の介護をするうえでまず知ってほしいのが地域包括支援センターです。 介護のスタートラインから介護中の悩み、施設情報など幅広く対応してもらえます。市区町村が設置する公的機関で、全国に5,451カ所(2024年4月時点)あり、利用料は原則かかりません。 本人だけでなく家族の相談にも対応してもらえる心強い相談先です。
高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、全国の市町村に設置されている介護・保健・福祉・医療など様々な面から包括的にサポートする「地域の総合相談窓口」です。
センターには社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーが配置されており、相談内容に応じた専門職がチームで動きます。
地域の関係者による、地域づくりや政策形成の場でもあり、認定申請の代行やケアマネジャーの紹介もしてもらえるため、困った時最初に頼れる窓口として覚えておくとよいでしょう。
主な業務は次の4つです。
- 総合相談支援
-
介護に関する悩みの他、医療や福祉、高齢者の暮らし全般、地域住民からの相談などを幅広く受け付け、適切なサービスや制度につなぎます。
- 介護予防ケアマネジメント
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要介護認定の際、「要支援」と認定された方や、要介護になる可能性がある方に対し、介護予防サービスを利用するためのケアプランを作成します。
- 権利擁護
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高齢者の人権を守るため、高齢者虐待の発見・対応、成年後見制度の活用支援などを行います。
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援
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ケアマネジャーの支援、医療機関や介護事業所、ボランティアなどと連携して、包括的・継続的(関係各所を網羅し、継続的)にケアできる体制を構築します。
介護に追われる日々のなかで、自分の体調変化を後回しにしてしまう方は少なくありません。 しかし介護者自身の体が持たなくなれば、介護の継続そのものが危うくなります。
総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、介護・看護を理由に離職した人は年間10万6,000人で、2017年調査から7,000人増えていました。
限界を迎えてから動くのではなく、早い段階で「自分は無理をしていないか」と振り返る習慣を持つことが大切です。 ここからは介護疲れの具体的なサイン、頼れる支援、家族との関わり方を見ていきましょう。
要介護認定の申請から利用開始までの手順
介護保険サービスを利用するには、まず市区町村の窓口で「要介護認定」の申請を行う必要があります。 認定の通知は、申請から原則30日以内に行なわれます。
申請の流れは、大きく以下4つの段階に分かれます。
住所地の市区町村窓口(介護保険課や高齢者支援課など)に「要介護認定申請書」を提出します。
本人が窓口に行けない場合、家族が代理で申請できるほか、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者に代行を依頼することも可能です。
65歳以上の方は介護保険被保険者証、40歳から64歳の方は医療保険証を持参してください。
市区町村の認定調査員が自宅や入院先を訪問し、心身の状態について74項目の聞き取り調査を行います。
並行して、市区町村から主治医に意見書の作成が依頼されますが、主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受けることになります。
調査結果と主治医意見書の一部は全国共通の判定ソフトに入力され、まずコンピュータによる一次判定が行われます。
その後、医療や介護の専門家で構成される介護認定審査会が二次判定を実施し、最終的な要介護度が決定されます。
認定結果は、非該当(自立)、要支援1・2、要介護1から5の7段階および非該当で通知されます。
要介護1以上と認定された場合は、担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)にケアプランの作成を依頼し、ケアプランに基づいてサービスの利用が始まります。
急ぎの場合は、暫定的にケアプランを組んでサービスを開始し、認定結果が出た後に正式なプランへ切り替える方法がありますので、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者に相談してみてください。
「ケアマネジャー」調整・サポートのプロ 頼れる介護の司令塔
要介護認定を受けた方のケアプラン作成や関係各所との調整役がケアマネジャーです。ケアマネジャーは担当制になっており、継続的に同じ方の対応をすることで、それぞれの介護環境に応じた適切な介護支援を受けられるようになっています。
介護保険法に基づき、介護を必要とする高齢者やその家族それぞれが、状況に合わせた適切な介護サービスを受けられるように調整・サポートする専門職です。
ケアマネジャーは介護に関する相談を幅広く取り扱っており、以下のような相談はすべて対応可能です。特に介護保険の申請やデイサービス、訪問介護などの利用計画は介護者にとって重要なポイントになりますので、覚えておいてください。
- 介護保険申請方法
- デイサービスの利用計画
- 訪問介護の利用計画
- 車椅子やベッドなどののレンタル・購入
- 手すりなどの住宅改修
- 施設入所について
ケアマネジャーの役割は「利用者が住み慣れた地域で自分らしく生活できるように支援する」ことで、そのための業務として以下の業務を行っています。
- 相談受付
-
高齢者本人や家族の悩みや相談を聞き、抱える課題を解決できるようサポートする
- ケアプランの作成
-
必要な介護サービスの種類や頻度を計画する
- 連絡・調整
-
介護サービス事業者や医療機関との連絡全般から調整まで行い、各所との連携を図る
- モニタリング
-
定期的に訪問し、サービスが適切に利用されているか、心身の状況に変化がないかを確認する
- 要介護認定の申請代行・認定調査
-
要か尾後認定の申請を行う他、市町村の委託を受けて要介護認定の訪問調査を行う
- 給付管理
-
介護保険サービスが適正に利用されているか、毎月の給付管理を行う
医療行為(点滴・注射など)・医療判断・直接的な介護・医療・家事・身体に触れる介護・食事作り・掃除の代行・法的な行為・手続き・遺産相続相談・契約代理・制度外の金銭的援助・生活保護の認定・保険外サービスの手配、など
「勤務先の上司や人事」休業・時短・残業は早めの相談で解決
介護をしていることを職場に伝えるのは、心理的なハードルが高いものです。「迷惑をかけるのでは」「評価に響くのでは」という不安もあるでしょう。
ただ、2025年4月施行の改正育児・介護休業法では、事業主に対して介護に関する制度の周知や相談体制の整備が義務化され、職場側も支援する仕組みを整え始めています。
伝えるタイミングや内容、事前の準備を工夫すれば、職場との関係を保ちながら介護と仕事を両立できる環境がつくれるはずです。具体的な進め方を見ていきましょう。
上司や人事に相談するタイミングと伝える内容
相談のタイミングは「介護が必要だと分かった時点」が理想で、具体的には親が要介護認定を受けた段階や、入院・体調の急変で介護が見込まれる段階で伝えるのが望ましいでしょう。
限界まで一人で抱え込んでから打ち明けると、引き継ぎの準備期間がなく、かえって職場への影響が大きくなってしまいます。伝える内容は以下の3点に絞ると話が通りやすくなるでしょう。業務への影響範囲と自分が希望する対応を簡潔にまとめておくのがコツです。
- ①現在の介護状況
-
親の要介護度や症状の概要
- ②利用したい制度
-
介護休業、介護休暇、時短勤務など
- ③今後の見通し
-
制度利用期間や不確定要素
まずは直属の上司に口頭で概要を伝え、その後に人事担当者と制度の利用手続きを進めるという二段階の流れが一般的でしょう。
引き継ぎや勤務調整を円滑にするための準備
職場に相談する前に、自分の業務を棚卸ししておくと引き継ぎが格段にスムーズになります。
- 業務の引継ぎ
-
担当業務の一覧、進行中の案件の状況、定期的に発生するタスクのスケジュールをまとめたメモがあれば、引き継ぎ相手や上司が判断しやすくなるでしょう。
- 介護休業の取得
-
介護休業を分割取得する場合は、予定時期をできるだけ早めに示すことが有効です。「来月中に1回目の休業を20日間取得し、退院後の在宅介護体制を整えたい」など目的と期間をセットで伝えると、職場側の人員調整がしやすくなります。
- 勤務時間の調整
-
時短勤務やフレックスタイムを利用するなら「午前中は出社、16時以降はリモートで対応」のように業務に支障が出にくい働き方の案を自ら提示するのがおすすめ。
介護の状況は変わりやすいため、定期的に上司や人事と共有する場を設けておくと、長期的な信頼関係の維持にもつながるはずです。
親の介護で仕事を辞めるべきか?介護者の限界サイン
どんなに介護者が情や愛情をもって介護をしても人間の心身には限界があります。慢性的な疲労や睡眠不足、心身の不調はもちろんのこと、金銭的な限界に不安を覚えている方もいるでしょう。
限界を迎えてからでは出来るはずの対策もできません。介護者の限界サインを見逃さず、限界が見える前に介護のプロに相談したり、介護サービスへ切り替えたりすることが最善です。
ここでは介護者の限界サインについて解説します。
限界サインのスタートは睡眠から
介護の負担が重くなると、最初に影響が出やすいのが睡眠です。 夜間のトイレ介助やおむつ交換で何度も起こされる生活が続けば、慢性的な寝不足に陥るこは当然のこと。 厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、睡眠不足の継続が疲労や判断力低下を招くと指摘されています。
次のような変化が2週間以上続いているなら、介護負担が限界に近づいているサインだと考えてよいでしょう。
- 夜中に何度も目が覚め、日中も強い眠気を感じる
- 食欲がなくなった、もしくは食べすぎてしまう
- 肩こりや頭痛、腰痛が慢性化している
- 以前は楽しめた趣味や外出に関心が向かなくなった
- 些細なことでイライラしたり、急に涙が出たりする
介護負担を一人で抱え込み、仕事を続けようとしても両立できる期間には限りがあることは誰にでも想像できるでしょう。その結果、望んでいない介護離職への道へと進まざるを得なくなってしまうのです。
ショートステイやデイサービスを活用し、週に数回でも介護から離れる時間を確保してください。 体調に異変を感じたら先延ばしにせず、早めにかかりつけ医を受診することが大切です。
仕事との両立は限界前の対策が鍵
限界サインについてお伝えしましたが、実際に仕事と介護の両立は限界サインが見えてからでは出来ません。限界サインが見える前に対策をすることで無理なく介護と仕事の両立ができるようになります。
- 自宅や介護での状況
-
- 連日の夜間徘徊
- 24時間医療的ケアが必要になる
- 自由時間がまったく取れない
- 経済的に逼迫している
- 職場での状況
-
- 仕事のミスが増える
- 業務中の集中力・生産性低下
- 役職から外れる
- 昇進を諦める
- 精神的・身体的状態
-
- 強い不安がある
- 常にイライラする
- (介護以外の理由で)眠れない日が出てくる
- 持病の悪化
- 身体の痛み
- 連日疲労感が取れない、など
上記のような変化が見られたら、なるべく早く家族やケアマネジャー、地域包括支援センターに相談し、介護から離れる時間を作りましょう。レスパイトの活用や一時的な役割分担の変更などで介護者の心身に余裕を作ることが大切です。
施設入所を検討するタイミング
在宅介護サービスをフルに使っても対応しきれない状況が生じたときは、施設への入所を検討する段階です。「まだ自宅で頑張れるのではないか」と迷う方は多いですが、以下のような状態が続く場合は、介護の専門職に相談しましょう。
- 24時間介護
-
夜間の徘徊や頻繁な転倒があり、24時間の見守りが必要
- 認知症の進行
-
認知症の進行で暴言や暴力などの行動・心理症状が頻繁にみられる
- 介護者の状態
-
介護する家族の健康状態が悪化し、介護の継続が困難
- 医療的ケア
-
たんの吸引、経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要で、在宅では十分な対応ができない
- 独居
-
本人が独居で、訪問介護やデイサービスの時間外に安全を確保できない
施設の種類と入所条件
施設にはいくつかの種類があり、それぞれで入所の条件が異なります。
| 施設名 | 入居条件 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 原則、要介護3以上 ※要介護1・2でも、認知症や障がいによる著しい生活支障、虐待の恐れ、家族支援や地域サービスが不足している場合などは、市区町村の関与と選考を経て、特例的に入所が認められる |
| 介護老人保健施設(老健) | 要介護1以上かつ在宅復帰を目指す人 |
| 介護付き有料老人ホーム | 施設ごとに異なる(自立~要介護まで幅広い) |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 原則60歳以上(または要支援・要介護認定者) ※介護度条件は物件ごとに異なる |
厚生労働省が公表した2025年4月時点のデータでは、特養の入所待ちの方は全国で約22.5万人でした。 2015年に入所要件が要介護3以上に改正されて以降、待機者数は減少傾向にあるものの、依然として入所までに時間がかかる地域もあります。
施設を選ぶ際は、まず担当のケアマネジャーに現在の介護状況を率直に伝えてください。
その上で、可能であれば複数の施設を見学し、雰囲気や職員の対応、医療体制を確認することが望ましいでしょう。
施設入所は「在宅介護の終わり」ではなく、家族の役割が変わる節目であり、面会や外出の機会を通じて、本人との関わりを続けることはできます。 「施設に預ける=見捨てる」ではないということを、どうか忘れないでください。
高額介護サービス費など負担を減らせる公的制度
介護保険サービスの自己負担は1割から3割ですが、利用量が増えると月の合計額は膨らみがちです。 そんなときに頼りになるのが「高額介護サービス費」で、1カ月の自己負担が所得に応じた上限を超えた分を払い戻してもらえる仕組みとなっています。
一般的な課税世帯(課税所得380万円未満)の上限は月額4万4,400円、非課税世帯は月額2万4,600円、課税所得690万円以上の世帯では月額14万100円です。
| 負担上限額(月額)一覧表 | 対象者 | 負担の上限額(月額) |
|---|---|---|
| 第1段階 | ① 生活保護を受給している方等 | 15,000円(個人) |
| ② 15,000円への減額により生活保護の被保護者とならない場合 | 15,000円(世帯) | |
| ③ 市町村民税世帯非課税の老齢福祉年金受給者 | 24,600円(世帯)/15,000円(個人) | |
| 第2段階 | 市町村民税世帯非課税で、公的年金等収入金額+その他の合計所得金額が80.9万円以下 | 24,600円(世帯)/15,000円(個人) |
| 第3段階 | 市町村民税世帯非課税で、第1段階・第2段階に該当しない方 | 24,600円(世帯) |
| 第4段階 | ① 市区町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) |
| ② 課税所得380万円(年収約770万円)~690万円(年収約1,160万円)未満 | 93,000円(世帯) | |
| ③ 課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 140,100円(世帯) |
第4段階における課税所得による判定は、同一世帯内の65歳以上の方の課税所得により判定されます。
対象になると市区町村から申請書が届くため、届いたら忘れずに手続きしてください。 初回の申請だけ済ませれば、以降は自動的に処理される点も覚えておくと安心でしょう。
1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)に医療保険と介護保険の双方に自己負担がある世帯に対し、その自己負担額を合算し、所得に応じた一定の限度額を超えた場合に、その超えた金額が払い戻される制度です。
医療費単体、または介護費単体だと高額療養費制度などの対象にならない場合でも、両方を合算することで上限を超え、払い戻しを受けられる可能性があります。
こうした軽減制度の多くは自分から申請しないと適用されません。 市区町村の窓口やケアマネジャーに一度確認しておくことをおすすめします。
