退院後の介護どうする?在宅か施設か判断するためのポイント

退院後の介護どうする?在宅か施設か判断するためのポイント

家族の退院が決まったものの、その後どこでどのように介護するか悩んでいませんか。自宅で介護を続けられるのか、施設に入居すべきなのか、判断に迷う方は少なくありません。

退院後の介護場所を決めるには、本人の病状、家族の介護体制、自宅の環境など、様々な視点から総合的に考える必要があります。

施設は介護度や費用などに応じて複数の種類があります。最適な入居先を選ぶことが大切ですが、退院後に介護が必要な方は、退院が決まってからの準備では間に合わないため、入院中から準備を進めることをおすすめします。

この記事では、在宅か施設かを判断するための具体的なポイントと、それぞれの選択肢で必要となる準備について解説します。

より良い選択は、本人にとっても家族にとっても無理のない介護生活につながるでしょう。

目次

退院後の介護をどこで受けるか考える

退院が決まると、家族は次にどこで介護を受けるべきか考える必要があります。選択肢は大きく分けて以下の3つです。

3つの介護場所
在宅介護

自宅に戻って訪問介護やデイサービスなどを利用しながら在宅介護を受ける方法です。
住み慣れた環境で生活を続けられる点が魅力ですが、家族の介護負担は大きくなります。

施設に入居

特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設に入居して介護を受ける方法です。
24時間体制で専門的なケアが受けられる安心感がある一方、費用負担の面や本人の心理的抵抗を考慮する必要があるでしょう。

リハビリ病院に転院

回復期リハビリテーション病院に転院してリハビリを受ける方法です。
脳卒中や骨折など、集中的なリハビリで機能回復が見込める場合に適した介護場所となります。

退院後の生活をどこで送るかは、本人の病状や介護度、必要な医療行為、家族の介護体制、経済的な状況など、さまざまな要素によって変わってきます。

参考:厚生労働省|要介護認定はどのように行われるか

在宅で介護を受ける選択肢

こんな方におすすめ
  • 医療依存度が比較的低い方
  • 家族のサポートが得られる方

自宅に戻って介護を受ける場合、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどの介護保険サービスを組み合わせることで、本人と家族それぞれの介護生活の支えとなります。

在宅介護で利用できる介護保険サービスは、大きく分けて以下の3サービスです。

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介護保険サービス提供者提供場所サービス内容
訪問介護ホームヘルパー自宅身体介護:食事入浴介護などの
生活援助:掃除、調理など
訪問看護看護師自宅訪問医師の指示に基づく医療的ケア
デイサービス施設スタッフ施設入浴、食事、レクリエーションなど

定期的な医療行為が必要でも、訪問看護などのサービスを利用すれば自宅での生活が可能なケースは少なくありません。家族が日中は仕事で不在になることが多い場合でも、デイサービスを週数回利用して在宅生活を維持している方もいます。

ただし、たん吸引や経管栄養など医療依存度が高くなると、24時間体制での対応が求められるため在宅介護の継続が困難になります。

住み慣れた環境で暮らし続けたいという本人の希望と、家族の介護体制のバランスを考慮しましょう。

参考:厚生労働省|公表されている介護サービスについて

施設に入居する選択肢

こんな方におすすめ
  • 要介護度が高い方
  • 重度の介護が必要な方
  • 家族だけでは対応が難しい医療的ケアが必要な方
  • 認知症で24時間の見守りが必要な方
  • 家族の介護負担が限界に達している方

介護施設に入居する場合、24時間体制で専門的な介護を受けられます。スタッフが常駐しているため、夜間の急な体調変化にも対応してもらえる安心感があるでしょう。

施設にはいくつか種類があり、それぞれに目的や役割が異なりますので、目的に合った施設を選択しなければなりません。

常に介護が必要な方が長期的に生活するための特別養護老人ホーム(特養)、病院を退院した後などに入所し、リハビリを行いながら在宅復帰を目指す介護老人保健施設(老健)、そして民間企業などが様々なサービスを付加して展開している有料老人ホームなどがあります。

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項目目的運営入所期間対象医療体制費用
特別養護老人ホーム(特養)介護が必要な方の長期生活の場公的(社会福祉法人など)原則長期原則 要介護3以上最低限比較的安い
介護老人保健施設(老健)在宅復帰を目指すリハビリ公的(医療法人など)原則一時的要介護1以上医師常勤・医療体制充実比較的安い
有料老人ホーム高齢者向けの住まい民間企業制限なし(施設による)自立〜要介護(施設による)施設による比較的高め
主な介護施設の特徴

住み慣れた自宅を離れることに抵抗を感じる方も多いですが、本人と家族双方が安心して暮らせる環境を選びましょう。

リハビリ病院に転院する選択肢

こんな方におすすめ
  • 脳卒中や骨折などで低下した身体機能の回復の見込みがある方
  • 入院生活で筋力が落ちてしまった方
  • 食事や歩行などの日常動作を再獲得したい方

急性期の治療が終わっても、すぐに自宅や施設での生活が難しい場合、回復期リハビリテーション病院への転院という選択肢があります。

回復期リハビリテーション病院の特徴
  • 在宅復帰を目指すことを目的とする
  • 1日最大3時間の集中的なリハビリを受けられる
  • 疾患により最長入院期間が決まっている

リハビリに関しては、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった専門職が、それぞれの症状に合わせた機能訓練を行います。入院期間は疾患によって異なり、脳卒中の場合は最長6か月、骨折などの整形疾患では最長3か月と定められています。

ただし、病状が不安定な場合や、積極的な治療が必要な状態では受け入れが難しいこともあるため、主治医との相談が必要です。

参考:入院(その3) 回復期入院医療について

在宅と施設、どちらを選ぶ?5つの判断ポイント

退院後の介護をどこで受けるかを決める際、感情だけで判断してしまうと、後から無理が生じたり行き詰まったりしてしまう可能性があります。在宅介護と施設入居のどちらを選ぶべきか、冷静に判断するための基準を持っておきましょう。

ここでは、判断に役立つ5つのポイントを紹介します。

各ポイントを順に検討していくと、それぞれの家庭に合った選択ができるでしょう。大切なのは、本人と家族双方にとって無理のない介護生活を送れるかどうかです。

各家庭の事情は異なりますので、現状に照らし合わせて考えてみましょう。

1.本人の病状と今後の見通しを確認

在宅か施設かを判断する第一歩は、本人の病状を正確に把握することです。退院前には主治医へ現状だけでなく、今後の回復見込みや病状の安定性などについても詳しい説明を求めましょう。

病状のタイプ在宅介護の可否注意点
安定している可能定期的な医療チェックが必要
進行性疾患当面可能将来的な施設入居を視野に
医療依存度が高い困難24時間対応が必要な場合は施設を検討
病状による判断基準

たん吸引や胃ろう、インスリン注射、酸素吸入などの医療的ケアが必要な場合、その処置を誰が行うのか、どの程度の頻度で必要なのかを把握する必要があります。

訪問看護で対応できる範囲なのか、家族が日常的に対応しなければならないのかによって、在宅介護の実現可能性が大きく変わってくるからです。

また、病状が安定しているか、それとも進行性の疾患なのかも重要な判断材料です。認知症やパーキンソン病など進行性の疾患の場合、退院時点では在宅介護が可能でも、将来的には施設入居が必要になる可能性を考慮する必要があります。

病状の将来を見通し、よく理解したうえで、長期的な視点を持って判断してください。

2.必要な医療行為を家族が対応できるか

在宅介護を選択する場合、家族が一部の医療行為や健康管理に関わる場面が出てきます。訪問看護師の定期的な訪問とは別に、日常的なケアは家族が担うことになるため、現実的に対応可能かどうかを見極める必要があるのです。

訓練で対応可能になる医療行為専門知識と技術を要する医療行為
服薬管理
胃ろうからの栄養注入
血糖値の測定
ストーマ管理など
たん吸引など急に必要になる可能性のある医療行為
経管栄養の管理
人工呼吸器の管理
中心静脈栄養など

家族の年齢や体力、仕事との両立も考慮したうえで、継続的に対応できるかを判断しましょう。

訪問看護や訪問介護などのサポートを最大限活用しても、家族の負担が大きすぎる場合や、医療依存度が高く専門的な管理が必要な場合は、施設入居を検討するタイミングです

無理をして在宅介護を続けた結果、介護者が体調を崩してしまっては元も子もありません。

3.家族の介護体制とサポート時間の見積もり

在宅介護を実現するには、誰が主な介護者となり、どの程度の時間を介護に充てられるかを具体的に考慮する必要があります。食事の準備や服薬の確認、トイレや入浴の介助など、日常的な介護にどれだけの時間がかかるのか、現実的に見積もってみましょう。

介護負担のチェックリスト
主介護者

家族の誰が中心になって介護するか

サポート時間

1日何時間対応可能か

複数人での分担

可能か・不可能か

仕事との両立

介護休業・時短勤務の利用可否

複数の家族で分担できる場合は在宅介護の負担も軽減されますが、主介護者一人に負担が集中するケースも少なくありません。仕事をしている家族の場合、介護との両立が可能かどうかも重要な判断ポイントです。

介護休業制度や時短勤務などの制度を活用できるか、勤務先に確認しておくとよいでしょう。デイサービスや訪問介護などの介護保険サービスを利用したとしても、サービスが入らない時間帯は家族が対応することになります。

介護サービスを最大限活用するから大丈夫!ではなく、家族にどの程度の負担が残るのかをシミュレーションしておきましょう。24時間の見守りが必要な認知症の方などは、家族だけでの対応が難しい場合もあります。

4.自宅が介護環境に適しているかを確認

在宅介護を選ぶ前に、自宅の物理的な環境が介護に適しているかを確認しておきましょう。

在宅介護に向けた環境
自宅内の段差

玄関や廊下、部屋の出入口に段差がある場合、転倒のリスクが高まる

トイレ・浴室の広さ

介助者が一緒に入れる広さがあるか、手すりを設置できるスペースの有無

廊下や各出入口の幅

車椅子を使用する場合、廊下の幅が80センチ以上あるか、各部屋の出入口を通れるか

寝室の広さ

介護ベッドを設置するには6畳程度のスペースが必要

バリアフリー化の工事には費用がかかります。介護保険の住宅改修費制度を利用すれば、20万円を上限として費用の9割が支給されますが、大規模な改修が必要な場合は自己負担も大きくなります。

賃貸住宅の場合は、大家の許可が必要になることも忘れてはいけません。自宅の環境を整えるのが難しい場合は、バリアフリー対応の施設入居も選択肢となります。

参考:介護保険における住宅改修

5.本人と家族の希望を確かめる

病状や介護体制、自宅環境といった客観的な条件をベースとして、最後に本人と家族の希望を確かめましょう。

本人が「住み慣れた自宅に帰りたい」と強く希望しているのか、それとも「家族に迷惑をかけたくない」と施設入居を考えているのか、素直な気持ちの確認が大切です。

家族についても、主介護者だけでなく、関わる家族全員の希望や不安を共有しておきましょう。「できる限り自宅で介護したい」という思いがある一方で、「仕事を続けながら介護できるか不安」といった懸念があっても不思議ではありません。

家族内でしっかり話し合い、お互いの考えを理解したうえでの決定が後悔のない選択につながります。

本人の希望と現実の介護体制にギャップがある場合は、介護サービスの活用や住宅改修で在宅介護を実現できないか検討してみましょう。

どうしても在宅介護が難しい場合は、本人に施設のメリットを丁寧に説明し、見学に同行してもらうなどして、納得のうえで決定できる場合もあります。

退院後に在宅介護を選ぶ場合の準備

退院後に在宅介護をすると決めたら、退院までに必要な手続きと準備を進めていく必要があります。退院日は意外と早く決まることが多いため、限られた時間の中で効率よく準備を進めましょう。

一般的な在宅介護準備
  • 要介護認定を申請する
  • ケアマネジャーを探してケアプランを作る
  • 訪問介護やデイサービスを手配する
  • 自宅のバリアフリー化を検討する

まず最優先で行うべきは、要介護認定の申請です。認定まで1か月程度かかるため、入院中から手続きを始めておくと安心です。

認定後はケアマネジャーを探してケアプランを作成し、必要な介護サービスの手配を行います。同時に、自宅の環境整備も検討する必要があります。

ここでは在宅介護の準備に必要な4つのステップを順番に解説します。手続きの内容と、どこに相談すればよいかを具体的に説明していきますので、チェックリストとして活用してください。

①要介護認定を申請する

介護保険サービスを利用するには、市区町村の窓口で要介護認定を申請する必要があります。申請窓口は「介護保険課」や「高齢福祉課」などの名称で、自治体によって異なるため、事前にホームページで確認しておきましょう。

介護認定申請に必要な書類
要介護認定申請書

市区町村へ「要介護・要支援認定」を申請するための書類です。全ての介護保険サービスの利用の第一歩になります。
申請書は窓口に置いてあるほか、自治体のホームページからダウンロードもできます。本人または家族が申請できますが、入院中や遠方に住んでいる場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者に代行を依頼することも可能です。

介護保険被保険者証(65歳以上)

介護保険の加入者(第1号被保険者)であることを証明する、介護サービス利用に必須の大切な書類です。
65歳に到達する誕生月(またはその前月)に市区町村から自動的に郵送されます。

マイナ保険証(健康保険被保険者証(40~64歳))

病院受診時に提示する保険証ですが、介護保険の第2号被保険者としての資格を証明する役割を持っています。65歳以上の方とは異なり、原則として「特定疾病(加齢に伴う疾病)」により要介護・要支援認定を受けた場合に限り、介護保険サービスを利用できます。

要介護認定は、退院日が決まってから申請すると間に合わない可能性があるため、入院中から早めに手続きを始めておきましょう。

申請後は認定調査や主治医の意見書作成が行われ、介護認定審査会で要介護度が判定されます。

参考:厚生労働省|サービス利用までの流れ

②ケアマネジャーを探してケアプランを作る

要介護認定を受けたら、次はケアマネジャーを探さなければなりません。ケアマネジャーの探し方は、市区町村の介護保険課や地域包括支援センターで居宅介護支援事業所のリストをもらうのが一般的です。

ケアマネジャーとは

正式名称を介護支援専門員といい、介護保険制度に基づいて、介護が必要な方やそのご家族が適切なサービスを受けられるよう、ケアプラン(介護サービス計画)を作成し、支援を行う専門職です。
要介護者と介護サービス事業者(デイサービスや訪問介護など)をつなぐ調整役であり、介護の相談窓口になります。

リストには事業所の住所、連絡先、所属するケアマネジャーの人数、併設サービスなどが記載されています。自宅から近い場所や医療連携が必要など、具体的な要望を伝えると、条件に合う事業所を教えてもらえます。

ケアマネジャーが決定すると、ケアプランの作成に入ります。ケアプラン作成は全額介護保険から給付されるため、利用者の自己負担はありません。

ケアプランの作成では、ケアマネジャーが自宅を訪問してアセスメントを行い、本人と家族の希望や生活状況を確認します。介護におけるアセスメントとは利用者や家族の心身状態などを情報収集し、課題を分析するというものです。

その後、必要な介護サービスを組み合わせてケアプランの原案を作成し、サービス担当者会議で関係者と協議して完成させます。退院後すぐに必要なサービスが利用できるよう、入院中から早めに相談を始めておきましょう。

③訪問介護やデイサービスを手配する

ケアプランができたら、実際に在宅生活を支える介護サービス事業所の手配に移ります。在宅介護の主なサービス(先述)には、自宅で身体介護や生活援助を受ける訪問介護、看護師が医療的ケアを提供する訪問看護、施設に通って入浴や食事などを受けるデイサービスがあります。

介護サービスは、ケアマネジャーと相談しながら本人の状態や家族の負担に応じて組み合わせが利用が可能です。

サービスを利用する各サービス事業所は、ケアマネジャーが事業所との調整を行った後、家族が直接各事業所を訪問し、重要事項説明書や契約書の内容を確認、署名・押印して個別に契約します。

契約時には、サービス内容や料金、緊急時の連絡先などを必ず確認し、退院前には事業所との契約や初回訪問日を調整しておきましょう。

入院中から訪問介護やデイサービスの利用開始日を決めておけば、退院後すぐに必要な支援を受けられ、安心して在宅生活をスタートできます。

退院してから慌てて手配すると、サービス開始まで時間がかかり、その間の家族の負担が大きくなってしまうので注意が必要です。

④自宅のバリアフリー化を検討する

在宅介護を始める前に、自宅環境が介護に適しているか確認し、必要に応じて改修を検討しましょう。

転倒防止のための手すり設置、段差解消のためのスロープ設置、車椅子が通れるよう廊下幅の拡張など、本人の身体状況に合わせた改修が必要になる場合があります。特に浴室やトイレなど、介護が必要になる場所は、重点的なチェックが必要です。

改修が必要な場合も介護保険の住宅改修費制度を利用すれば、自己負担は1~3割で済むため、経済的負担を大きく軽減できます。ケアマネジャーに相談すれば、申請手続きのサポートを受けられますが、工事前に市区町村への事前申請が必須で、事後申請では支給されないため注意が必要です。

介護保険 住宅改修費制度とは
対象者要支援1・2、要介護1~5の認定を受けている方
支給限度額原則20万円(生涯で)
自己負担1~3割(所得に応じて)
支給方法原則、一度全額支払い後、後日給付
※受領委任払い対応の場合あり
対象となる工事手すりの取付け
段差の解消
滑り防止や移動円滑化のための床材変更
引き戸等への扉の取替え
洋式便器等への取替え
上記に付帯する工事
事前申請工事前に市区町村への申請が必要

また、介護ベッドや車椅子などの福祉用具は、購入ではなく基本的にレンタルとすることで、本人の状態変化に応じて用具を交換でき、介護保険の給付対象にもできます。

住宅改修と福祉用具レンタルを組み合わせ、費用を抑えながら安全な介護環境を整えておきましょう。

退院後に施設入居を選ぶ場合の準備

つづいて施設入居を選択した場合の準備についてを解説します。見学から入居まで早いと言われる有料老人ホームでも通常1~2ヶ月程度の時間が必要なため、退院日が決まったらすぐに準備を始めましょう。

時間に余裕を持つことで、気に入った施設があれば体験入居を利用して、食事や生活サイクルが本人に合うかなどの確認もできます。

施設選びから入居までの簡単なステップ
  • 希望条件の整理
  • 資料請求・問い合わせ
  • 施設見学
  • 体験入居
  • 契約書類の準備
  • 契約
  • 入居

契約には、健康診断書や診療情報提供書など医療機関に依頼する書類が必要ですが、医療機関の書類発行は、依頼してから2週間以上かかることも珍しくありません。

退院が近づいてから慌てないよう、入院中から施設探しと必要書類の準備を並行して進めておくと、スムーズな入居が可能です。

入居できる施設の種類を知る

施設には様々な種類があり、それぞれに特徴、入居条件が異なります。本人の状態と希望に合った施設を選ぶには、要介護度、医療ケアの必要性、予算、入居までの期間を確かめることが必要です。

すぐに入居が必要なら有料老人ホーム、費用を抑えたいなら特養や老健、リハビリ重視なら老健というように、優先順位を明確にしておくとよいでしょう。

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施設の種類条件月額の目安入居時費用特徴
特別養護老人ホーム(特養)要介護3以上8~13万円不要~数十万円待機者が多く入居まで数ヶ月から数年かかる場合あり
介護老人保健施設(老健)要介護1以上9~20万円不要リハビリに力を入れている在宅復帰を目指す方向け
3~6ヶ月程度の利用が前提
有料老人ホーム介護付きか住宅型かによって異なる
介護付きは要介護1以上
自立・要支援・要介護までの混合型もあり
15~40万円0円~数百万円サービスや設備が充実
グループホーム認知症の方が対象15~30万円0~100万円少人数で家庭的な雰囲気で生活できる

参考:厚生労働省|施設・居住系サービスについて

退院までのスケジュールを立てる

施設入居を選択したら、退院日から逆算してスケジュールを組んでおきます。退院予定日が決まったらすぐに動き始めましょう。

退院までのスケジュールの目安
退院2か月前

候補施設の見学

退院1か月前

体験入居と申込

退院2週間前

契約と必要書類の準備を完了

ただし、特別養護老人ホームのように待機期間が長い施設もあり、退院までに入居が間に合わない場合があります。

その際は、介護老人保健施設やショートステイを一時的に利用し、本命の施設の空きを待つという選択肢もあります。病院の医療ソーシャルワーカーに相談すれば、つなぎとなる施設を紹介してもらえます。

退院日と施設受入日の調整

医師の退院許可日と施設の受入日を調整しましょう。施設側は健康診断書などの書類を確認してから受入日を決めるため、医師と施設の双方と早めに連絡を取り合い、スムーズに入居できる日程を組んでおきます。

医療ソーシャルワーカーに相談する

施設入居を検討するなら、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。MSWは退院支援の専門家で、本人の病状や介護の必要度、家族の経済状況などを総合的に判断し、条件に合った施設を紹介してくれます。

単に施設リストを渡すだけでなく、それぞれの施設の特徴や費用、サービス内容を丁寧に説明し、見学の手配や診療情報提供書の準備、施設との連絡調整など、入居に向けた具体的なサポートを行ってくれる心強い存在です。

入院中の早い段階から相談すれば、施設探しに十分な時間が確保でき、複数の候補を比較検討できます。ほとんどの病院にMSWが配置されているため、看護師や受付に尋ねれば相談窓口を案内してもらえるでしょう。

参考:医療ソーシャルワーカーの業務内容

本人が納得して入居できるよう話し合う

施設入居を家族が決めても、本人が抵抗感を持つケースは少なくありません。「家に帰りたい」という気持ちは自然なものですから、本人の思いに寄り添いながら丁寧に話し合いましょう。

まずは施設見学に本人も同行し、実際の雰囲気や生活の様子を体験してもらいます。食事や入浴の設備、他の入居者との交流の場を見ると、漠然とした不安が和らぐことがあります。

話し合いでは、施設入居が家族の負担軽減だけでなく、本人の安全や健康のための選択であることを伝えましょう。「転倒のリスクが減る」「栄養バランスの取れた食事が摂れる」「何かあったときにすぐ対応してもらえる」といった具体的なメリットを示すと理解が深まります。

また、「いつでも面会に来る」「週末は一緒に過ごす」など、家族とのつながりが続くことも伝えると安心につながるでしょう。

本人の意思を尊重しながら、時間をかけて納得してもらうプロセスが重要です。

退院後の介護で困ったときの相談先

退院後に在宅介護や施設生活を始めても、予想していなかった問題や不安が出てくることがあります。そんなときは一人で抱え込まず、専門家に相談しましょう。

困りごとの内容によって適切な相談先が異なるため、それぞれの役割を知っておくと安心です。

主な相談先
ケアマネジャー

介護サービス全般の調整

地域包括支援センター

幅広い生活の相談、

医療機関

病状や医療ケアの相談

早めに相談すれば、問題が深刻化する前に解決策が見つかりやすくなります。

遠慮せずに声を上げることが、本人にとっても家族にとっても、より良い介護生活を続けるための第一歩です。

介護全般の相談なら地域包括支援センター

介護サービスの使い方が分からない

家族の負担が大きすぎる

近所に頼れる人がいない

このような困りごとや悩みを相談できるのが、地域包括支援センターです。介護全般の総合相談窓口として日常的な困りごとから、虐待や認知症の問題まで、様々な悩みを受け付けてくれます。

特に、まだケアマネジャーが決まっていない場合や、現在のサービス調整に困っているときは、地域包括支援センターが心強い味方となってくれるでしょう。

また、地域にある介護サービスや支援制度の情報を提供してくれるため、知らなかったサービスを見つけるきっかけにもなります。

成年後見制度の案内など、高齢者の権利を守る支援も行っており、お金の管理や契約に不安がある場合も相談できますので、困ったときはまず相談してみましょう。

MSWが医療や退院に関する相談に強いのに対し、地域包括支援センターは地域での生活全般をサポートする拠点です。

参考:厚生労働省|地域包括ケアシステム

ケアマネジャーは在宅介護での身近な相談相手

在宅介護を選んだ場合、最も身近な相談相手となるのがケアマネジャーです。ケアマネジャーは担当者として継続的に関わり、本人や家族の状況をよく理解しているため、日常的な困りごとから専門的な課題まで幅広く相談できます。

介護サービスの追加や変更、ケアプランの見直し、サービス事業所とのトラブル対応など、実務的な相談に対応してくれるでしょう。

本人の状態が変化して今のサービスでは足りなくなった場合や、家族の介護負担が限界に近づいている場合も、まずはケアマネジャーへの相談がおすすめです。ケアマネジャーが対応できない内容であれば、地域包括支援センターや医療機関など、適切な相談先につなげてもらえます。

定期的な訪問時だけでなく、困ったときはいつでも連絡して構いません。遠慮せずに相談し、より良い介護体制を一緒に作っていきましょう。