透析治療中だけど、ラーメンが食べたい。そんな気持ちを抱えている方は少なくありません。塩分や水分の制限がある透析患者にとって、ラーメンは「我慢すべき食べ物」と思われがちですが、工夫次第で楽しむことは可能です。
結論として、透析中でもラーメンを食べることはできます。ただし、スープを残すだけでなく、麺の量を調整する、ゆで汁を捨てる、食べるタイミングを透析日に合わせるなど、複数の対策を組み合わせることが大切です。
この記事では、ラーメンに含まれる塩分・リン・カリウムの具体的な数値から、自宅や外食での減塩テクニック、食べる頻度の目安まで詳しく解説します。主治医や管理栄養士と相談しながら、食事療法を続けるヒントとして活用してください。
透析中でもラーメンは食べられる
ラーメンは塩分と水分が多い料理の代表格であり、透析患者にとってはハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、食べ方や量を調整すれば、まったく食べられないわけではありません。
ここでは、ラーメン1杯に含まれる塩分量と透析患者の摂取基準を確認し、注意すべきポイントを整理します。大切なのは「絶対に食べない」ではなく、「どう食べるか」を知ることです。
ラーメン1杯に含まれる塩分量
一般的なラーメン店で提供される1杯には、約5~7g前後の塩分が含まれています。店舗や味の種類によって差があり、濃いめの味噌ラーメンや家系ラーメンでは8gを超えることも珍しくありません。
ラーメンの塩分は主にスープに含まれています。麺自体にも塩分は入っていますが、スープを残すことで摂取量を大幅にカットできます。麺だけを食べてスープをほぼ残した場合、塩分摂取量は1〜2g程度まで抑えられるとされています。
インスタントラーメンやカップ麺も同様に、1食あたり5〜7g程度の塩分を含んでいます。商品によって差があるため、購入前にパッケージの栄養成分表示を確認する習慣をつけましょう。
参考:Na and K Content and Na/K Ratio of Ramen Dishes Served in Ramen Restaurants in Kyoto City, Japan|MDPI
透析患者の1日あたりの塩分摂取基準
日本腎臓学会のガイドラインでは、血液透析患者の1日の塩分摂取量は6g未満を推奨しています。この基準は、尿量や体格、透析間の体重増加などを考慮して個別に調整されるものです。
- 男性:約10.9g
- 女性:約9.3g
この一般的な塩分摂取量を見ると、透析患者に求められる6g未満という数値がいかに厳しいかがわかります。
ラーメン1杯を完食すると、この1日分の基準をほぼ使い切ってしまう計算になります。そのため、ラーメンを食べる日は前後の食事で徹底的に塩分を控える、あるいはスープを残すなどの工夫が欠かせません。
塩分だけでなくリンとカリウムにも注意が必要
透析患者がラーメンを食べる際、塩分以外にも気をつけたいのがリンとカリウムです。透析では体内に溜まった老廃物を除去しますが、リンやカリウムの除去には限界があります。
リンは麺やチャーシュー、煮卵などに多く含まれています。とくにインスタント麺やカップ麺には、食品添加物として「無機リン」が使われており、体内への吸収率が90%以上と高いため注意が必要です。
血液透析患者のリン摂取目安は、1日あたりのたんぱく質量(g)×15mg以下とされています。
カリウムについては、野菜たっぷりのタンメンなどで摂取量が増えやすくなります。野菜のカリウムはスープに溶け出すため、スープを飲むとカリウム摂取量も増えてしまいます。
血液透析患者のカリウム摂取目安は1日2,000mg以下です。
参考:腎代替療法選択ガイド2020|血液透析を始めた後は、食事や飲水はどうなりますか?
スープの水分が体重増加につながる仕組み
塩分を摂ると体は浸透圧を調整しようとして、水分を取り込もうとします。ラーメンのスープを飲むと喉が渇き、その後の水分摂取が増えて体重増加につながるという流れです。
透析間の体重増加は、中2日では6%未満に抑えることが望ましいとされています。ドライウェイトが50kgの方であれば、中2日で3kgまでが目安です。スープの水分をそのまま摂取すると、この範囲を超えやすくなります。
参考:一般社団法人 日本透析医学会 維持血液透析ガイドライン:血液透析処方
スープを残す以外にできる塩分カットの方法
スープを残すのは減塩の基本ですが、それだけでは不十分だと感じる方もいるでしょう。
ここでは、自宅でラーメンを作るときに実践できる塩分・リンの削減テクニックを紹介します。ちょっとした工夫で、満足感を保ちながら体への負担を減らせます。
麺の量を減らして塩分とリンの摂取を抑える
麺自体にも塩分とリンが含まれているため、量を減らすだけで両方の摂取量をカットできます。通常の1人前は120〜150g程度ですが、半量の60〜80gにするだけでも効果があります。
麺の量が少ないと物足りなく感じるかもしれません。その場合は、もやしやキャベツなど、茹でてカリウムを減らした野菜を加えてボリュームを補う方法があります。
ゆで汁を一度捨ててから調理する
自宅でインスタント麺や生麺を調理する場合、麺を茹でた湯をそのままスープに使うことが多いはずです。しかし、この茹で汁には麺から溶け出した塩分やリンが含まれています。
茹で汁を一度捨て、スープ用の湯を別に沸かして作ることで、リンを約半分に減らせるとされています。
袋麺であればこの方法は簡単に実践できます。カップ麺の場合は、一度お湯を注いで麺をほぐした後、そのお湯を捨てて新しいお湯でスープを作る方法もあります。
スープの素を半量以下にして薄味に仕上げる
市販のラーメンに付属するスープの素は、そのまま使うと塩分が高くなりがちです。思い切って半量以下にしてみましょう。お湯の量も同時に減らすと、味が薄くなりすぎることを防げます。
たとえば、スープの素を半分にして、お湯の量も半分にすれば、濃度は保ちつつ総塩分量を減らせます。スープの量が減れば、飲んでしまうリスクも自然と下がります。
だしや酢・薬味で風味を補う調味の工夫
塩分を減らすと味が物足りなく感じることがあります。その対策として、塩味以外の風味を活用しましょう。
- 香りをプラス
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おろしにんにく・おろししょう
- 酸味を加える
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酢・レモン汁
- 辛味やスパイシーさを出す
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ラー油・胡椒
- 薬味を多めに使う
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ねぎ・大葉・みょうがなど
これらの調味料や薬味は塩分が少なく、少量でも味にアクセントをつけてくれます。
外食でラーメンを注文するときの店選びと頼み方
自宅での工夫だけでなく、外食時にも対策は可能です。店選びや注文の仕方次第で、塩分やリンの摂取量をある程度コントロールできます。
完璧を目指す必要はありませんが、知っておくと安心です。
薄味やスープ少なめに対応できる店を選ぶ
一部のラーメン店では、味の濃さやスープの量を調整してもらえる場合があります。注文時に「スープを少なめで」「薄味でお願いします」と伝えてみましょう。
対応してもらえるかは店舗によりますが、最近は健康志向の高まりから柔軟に対応してくれる店も増えています。常連になって顔なじみになると、頼みやすくなることもあります。
また、つけ麺を選ぶ方法もあります。つけ麺はスープに麺をつけて食べるスタイルなので、麺全体がスープに浸かっている通常のラーメンよりも塩分摂取を抑えやすい傾向があります。
栄養成分表示があるチェーン店を活用する
大手チェーン店では、メニューごとの栄養成分をホームページやパンフレットで公開していることがあります。事前に塩分量を確認し、比較的低いメニューを選ぶことができます。
コンビニで販売されているラーメンも、パッケージに栄養成分が明記されています。外食よりも情報が得やすく、自分で塩分量を計算しながら選べる点がメリットです。
最近では、塩分やリン、カリウムを調整した透析患者向けのカップ麺も販売されています。こうした商品を活用すれば、普段の食事療法と両立しやすくなります。
セットメニューや追加トッピングは控える
ラーメン店のセットメニューは価格が手頃で魅力的ですが、塩分量が増える点に注意が必要です。
ラーメンだけで塩分が5~7gほどあるところに、餃子やチャーハン、チャーシュー丼などの味付けが濃い物がセットになれば、さらに塩分が追加されます。
また、チャーシューや煮卵の追加トッピングも、塩分とリンの両方を増やす要因になります。チャーシュー1枚と卵半分を減らすだけで、リンを大幅にカットできるとされています。
お肉やたまごが好きな方には残念かもしれませんが、トッピングはなるべく控えめにしましょう。
スープや具材ごとの塩分・リン・カリウムの違い
ラーメンの種類によって、塩分やリン、カリウムの含有量は異なります。どのスープを選ぶか、どんな具材を避けるべきか、事前に知っておくと判断しやすくなります。
醤油・味噌・塩・とんこつの塩分濃度の違い
ラーメンのスープは大きく醤油、味噌、塩、とんこつの4種類に分けられますが、一概にどのスープの塩分が高いとは言えません。一般的なラーメン1杯の塩分量は5〜7g程度とされており、種類や店舗によって大きく差があるからです。
- 塩ラーメン
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醤油や味噌などの調味料で味付けできない分、塩を多めに使っている場合があります。しかし、最近では減塩のための工夫がされるようになっており、使用されている塩や出汁によっては、味が濃く感じても塩分自体は低い物もあります。
- 醤油ラーメン・味噌ラーメン
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調味料での味付けができるので、比較的塩分は抑えられる傾向にあります。それでも塩分が高い物ももちろんあるので、注意は必要です。
- とんこつラーメン
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豚骨に合わせるタレもあるので、他の3種よりも塩分が少し多めになる傾向があります。あっさり系であれば大きな差は出ませんが、濃厚なタイプや家系ラーメンだと塩分量は増加します。
特に、量が多くタレも濃い次郎系ラーメンだと、塩分量は一般的なラーメンの3倍以上になるケースもあります。
- つけ麺
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スープの中でもつけ麺のスープは特に塩分が高くなっています。麺をつけて食べるというスタイルのため、スープの味を濃くする必要があるからです。
また麺に絡みやすくしてあるため、食べ方次第では通常のラーメンよりもスープの摂取量が多くなる場合があります。
ラーメンの塩分量は、味の種類よりも店舗の意向とレシピによるところが大きいです。味は好きなものを選んでも問題ありませんが、減塩系やあっさり系ラーメンを選んで塩分を抑えましょう。
チャーシューや煮卵に含まれるリンの目安
チャーシューや煮卵は、たんぱく質とともにリンを多く含んでいます。とくに卵は黄身にリンが集中しており、全卵1個(60g程度)で約100mgのリンが含まれます。
チャーシューは豚肉を使用しているため、1枚(約30g)あたり70〜80mg程度のリンが含まれます。チャーシューメンのように肉がたっぷり乗ったメニューでは、リンの摂取量が大幅に増えます。
餃子に使われるひき肉もリンが多いため、ラーメンとセットで頼むとリンの総量が跳ね上がります。具材を選ぶ際は、メンマやのりなど、比較的リンが少ないものを優先しましょう。
野菜たっぷりラーメンに含まれるカリウム
タンメンや野菜ラーメンは、一見ヘルシーに見えますが、カリウムの観点からは注意が必要です。
- もやし
- キャベツ
- にんじん
- ほうれん草など
野菜を茹でるとカリウムが湯に溶け出しますが、ラーメンの場合はその湯がスープの一部になっています。スープを飲むと、野菜から溶け出したカリウムまで一緒に摂取することになります。
野菜の量が多いラーメンを食べる場合は、スープを絶対に残す、野菜の量を調整してもらうなどして対策しましょう。
インスタント麺やカップ麺を食べるときの工夫
店まで行かずに、家で手軽にラーメンを食べたいときもあるかと思います。店で食べるラーメンと違い、インスタント麺やカップ麺は自分で塩分量を調節する必要があります。
今までと同じように作るのではなく、以下の工夫を心がけて塩分を減らしながら作ってみてください。
- 麺を茹でた、またはほぐした湯は捨て、スープ用の湯を別に用意する
- スープの素は半量にする
- スープは絶対に飲み干さない
- 透析患者向けに開発された調整カップ麺を利用する
ここにネギやショウガ、ニンニクなどの薬味を加えて少し味を補強すると、満足感が得やすくなります。
ラーメンを食べる頻度とタイミングの考え方
「どのくらいの頻度で食べていいのか」という疑問は、多くの透析患者が抱えるものです。
明確な答えは個人の状態によって異なりますが、考え方の目安をお伝えします。
透析日程に合わせて食べる日を選ぶ
ラーメンを食べるなら、透析の直前がおすすめです。透析治療で体内に溜まった塩分やリン、カリウムを除去できるため、体内への蓄積時間を短くできます。
たとえば週3回(月・水・金)の透析スケジュールであれば、透析日当日の昼食にラーメンを食べると、その日の午後に透析で除去できます。逆に、透析後から次の透析まで2日間空く週末前などは避けたほうが無難です。
透析間隔が中2日(土日を挟む場合など)のタイミングでは、塩分やカリウムの制限をより厳しくする必要があります。この期間にラーメンを食べると、体重増加や高カリウム血症のリスクが高まります。
たまの楽しみとして頻度を決める
ラーメンは「毎日食べる」ものではなく、「たまに楽しむ」位置づけにしましょう。週に1回程度であれば、前後の食事で調整することで対応できる方も多いです。
ただし、「週に1回は必ず食べる」と決めるよりも、「月に2〜3回程度を上限に」と緩やかに考えたほうが柔軟に対応できます。
食事制限はつらいと感じることもありますが、我慢しすぎるとストレスが溜まり、かえって暴飲暴食につながることもあります。無理のない範囲で楽しみを取り入れることが、長く続けるコツです。
体調や検査結果をもとに調整する
毎月の血液検査で、リンやカリウム、ナトリウムの数値を確認しましょう。数値が基準範囲を超えている場合は、ラーメンに限らず食事全体を見直す必要があります。
- 血清リン値の管理目標
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3.5〜5.5mg/dL
- 血清カリウム値の正常範囲
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3.5〜5.0mEq/L
これらの数値が高めに推移している場合は、ラーメンの頻度を減らすか、より徹底した減塩・減リン対策を講じましょう。
自分の数値を把握し、主治医や管理栄養士と相談しながら、「自分にとってのOKライン」を見つけることが大切です。
ラーメンを食べた日に意識したい前後の食事と水分管理
ラーメンを食べる日は、1日トータルでの塩分・水分量を意識することが欠かせません。前後の食事で調整することで、体への負担を抑えられます。
朝食や夕食で塩分とカリウムを抑えて1日の総量を守る
昼にラーメンを食べる予定なら、朝食と夕食は徹底的に減塩メニューにしましょう。味噌汁やスープは控える、漬物や佃煮は避ける、調味料は最小限にするなど、細かい積み重ねが大切です。
ラーメン(スープを残しても約2〜3g)を食べるなら、残りの食事で3〜4g以内に収める必要があります。
1食あたり1.5g程度の塩分で抑えるイメージです。
カリウムについても同様で、ラーメンの前後で果物や生野菜を控えめにし、野菜は茹でこぼしてから使うなどの工夫を心がけましょう。
喉の渇きには氷を活用して水分摂取量を調整する
ラーメンを食べた後は、塩分の影響で喉が渇きやすくなります。ここで水をがぶ飲みしてしまうと、体重増加に直結します。
喉の渇きを紛らわす方法として、氷を口に含む方法があります。
氷1個あたりの水分量は約20mL程度で、ゆっくり溶かしながら口の中を潤すことで、少量の水分でも喉の渇きに対処できます。
うがいをして口の中をさっぱりさせる、歯磨きをする、ガムを噛むなども、喉の渇きを紛らわすのに役立ちます。
主治医や管理栄養士と相談して自分のルールをつくる
ここまで紹介した内容はあくまで一般的な目安です。透析患者の状態は一人ひとり異なり、残腎機能や透析条件、合併症の有無によって適切な食事量は変わります。
「ラーメンを月に何回まで食べていいか」「どのくらいスープを残せばいいか」といった具体的な基準は、主治医や管理栄養士に相談して決めましょう。食事日記をつけて血液検査の結果と照らし合わせると、自分に合ったマイルールを見つけやすくなります。
食事療法は制限と捉えるよりも、自分の体を守るための工夫と考えてください。好きなものを完全に諦めるのではなく、うまく付き合う方法を探ることが、長期的な健康維持につながります。
